阪神が子どもの運動離れ対策に新スクール 甲子園で複数競技を体験
阪神が子どもの運動離れ対策に新スクール 甲子園で複数競技

阪神電鉄と総合型スポーツ教室を展開する「biima」(東京都)が提携し、幼児から小学3年生を対象にした「タイガースアカデミーマルチスポーツスクール」を今春、甲子園球場(兵庫県西宮市)の室内練習場など2会場で開校した。走ったり、小さなコーンを集める遊びをしたりと、様々な運動を楽しむのが特色だ。

複数競技を体験し、運動能力の向上へ

教室は週1回、biimaが講師を派遣し、基礎的な運動のほか、野球、サッカー、テニス、体操など年間7種目以上(1~2か月ごとに変更)を行う。球団が開催場所の提供などでサポートする。多様な運動が身体能力の向上につながるといい、兵庫県西宮市の小学2年の男児(7)は「友達がやっているからサッカーが楽しみ」と話した。

子どもの運動離れが社会課題となる中、「より多くの子どもにスポーツをする機会を広げたい」(biima)、「好きな競技を見つけるきっかけになれば」(阪神)と両者が期待を寄せる。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

野球人口の減少に危機感

少子化の影響もあり、野球の競技人口の減少は深刻だ。笹川スポーツ財団の調査によると、「10歳代で年1回以上、野球をした人口」は2001年の282万人から、25年は133万人とほぼ半減している。

阪神は2018年に野球やチアダンスのスクール「タイガースアカデミー」を設立。現在、野球は幼児~中学生、チアダンスは高校生以上を対象にコースを開設している。野球は球団OBらが指導し「野球を楽しむ」という方針が受け、当初の県内5会場から県内外の約20会場に増えた。

地域クラブ支援や大会開催も

今年は「トライアルベースボール」と銘打った事業を開始。野球教室や高校女子野球部の指導のほか、公立中学校の部活動を地域クラブに移す「地域展開」の支援にも取り組む。西宮市で受け皿となる軟式野球のクラブチームが不足していたことから、地元の野球教室運営団体「野球心」と協力して市内3か所に地域クラブを設立し、運営費の一部を負担。他の地域クラブを含め、アカデミーのコーチが巡回指導にあたる。

今年10~11月には市内の全チームを対象にした大会を開催し、甲子園球場で決勝を行う予定。市にはクラブについての問い合わせなどがあるといい、市は「野球の機運を高める方法を一緒に考えていきたい」と歓迎する。

次世代への布石

マルチスポーツ事業も同じ流れにある。幼少期の子どもにとって、野球はルールや動きが複雑で取っつきにくいという課題が見えてきたため、複数のスポーツの中に野球を組み込む方式をとった。野球振興室長を兼務する阪神の嶌村聡・球団本部長は「様々なスポーツを体験した結果、野球を選んでもらえればありがたいし、他の競技でもいい」と話す。

阪神は昨季、セ・リーグを制し、主催試合の入場者数は12球団トップの約296万人だった。人気は盤石に見えるが、嶌村本部長は「10年後、20年後はどうなるか分からない」と危機感を持ち、「ファンに支持される今だからこそ、予算と人員をかけ、次世代に向けた布石が必要」とみる。

嶌村本部長インタビュー

阪神が取り組む野球の振興活動について、嶌村球団本部長は「マルチスポーツ事業は子どもたちに運動を楽しんでもらうのが大きな目的。野球が前面に出ると、どうしても男児中心になりがちだが、マルチスポーツであれば男女ともに楽しめる」と語る。

「野球はある程度年齢が上がらないと、形にならない側面がある。アカデミーも未就学児クラスの定員はなかなか埋まらない。その世代にアプローチし、野球を身近に感じてもらいたいという狙いもある」と説明。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

中学の部活動については「プロを目指すわけではないが、野球を楽しみたいという層の受け皿にもなってきた。競技を離れても、視聴者、来場者として野球人気を支えてくれる存在だ。受け皿がなくなれば、競技人口の減少だけでなく、野球人気の低下にもつながりかねない。球団としても地域展開に協力していく」と話す。

主催試合は満員が続くが、「現状を考えると、将来への不安はぬぐえない。野球への関心が下がれば、事業形態として成り立たなくなる。振興事業は収益化が難しく、効果が出るのは先の話だろう。ただ、90年の伝統を持つ球団として、責任感と使命感を持って、次の時代へつないでいきたい」と語った。