自治体などが主体の「高齢者大学」が全国各地で活動している。かつては「老人大学」などの名称で知られ、今も名称はさまざまだが、学校ではなく、シニアが対象の生涯学習の場だ。現在の高齢者大学を知ろうと、千葉市中央区の千葉県生涯大学校京葉学園を訪ねた。
介護の授業で熱心にメモ
「耳のところが枕に当たって褥瘡ができやすいです」。横向きに寝ている姿のスライドを示しながら、講師が説明する。「地域ささえあいコース」2年生の介護の授業では、約20人の学生が熱心にメモをしながら、介護される人が安全で快適に過ごせる姿勢について学んでいた。
同コースの内容は介護のほか、ボランティア実習、税金など多彩だ。学んでいた佐々秀信さん(67)は刑務官として転勤を重ね、定年退職で生まれ故郷の千葉市に戻った。地域での付き合いに不安を感じ、入学。授業でボランティアを知り、今は保護司を務めるほか、多くのボランティア活動に携わっている。「いろいろな人の話を聞くことができ、視野が広がった。保護司の活動にもフィードバックできる」と話す。
地域への還元の担い手に
生涯大学校の小神野光俊・事務局長兼教務学生部長は「楽しむと同時に地域への還元の担い手になってほしい」と話す。コースは2年制。「陶芸ボランティアコース」では、4つの電気窯など本格的な設備があり、著名な陶芸家に指導を受けられる。京葉学園の渡邉博典学園長は「依頼を受けて、地域の陶芸教室や小学校の卒業制作の手伝いをすることもある」と説明する。
卒業生対象の専攻科もあり、コースの卒業生を対象に1年制の地域活動専攻科も設置されている。「NPOなどの設立方法と資金」といった、地域のリーダーとして活動を牽引するためのノウハウを学ぶ。田村佳子さん(70)はボランティアで高齢者のサロンを開催するにあたり、サロンの参加者に多くのことを伝えたいと入学し、専攻科に進んだ。「各自がテーマを決めて意見を出し合う授業などがあり、刺激になっている」と意欲的だ。詩吟や絵画などクラブ活動も盛んで、田村さんは俳句クラブに所属し、吟行することもあるそうだ。
さまざまな活動、相談を呼びかけ
さまざまな活動をしている生涯大学校だが、「まだ知らない人が多い」そうで、渡邉学園長は「興味があれば相談してほしい」と呼びかけている。
千葉県生涯大学校は昭和50年に開校。県が主体で、現在は学校法人植草学園が指定管理者として管理運営している。県内に6カ所あり、高齢者の社会活動や健康増進、地域活動の担い手の育成などが目的。県内に住む55歳以上が対象で、5コースと専攻科がある。授業は週1回。授業料は園芸まちづくり、陶芸ボランティアの各コースが年3万3300円、地域ささえあい、千葉ふるさとづくり、ふるさとささえあいの各コースと地域活動専攻科が年1万6400円。今年4月の入学者はコース、専攻科合わせ949人、平均年齢は72.6歳。
「社会を凝縮した形の一つ」
全国にある高齢者大学は名称だけでなく、学習内容や特色、カリキュラム、活動期間、授業料までさまざまだ。高齢者教育に詳しい早稲田大文学学術院の久保田治助教授は「それぞれの地域の課題や設置主体の目的に合わせた内容になっている」と説明する。久保田教授によると、昭和40年代ごろから、国の施策もあり、自治体による高齢者大学が広がっていった。趣味や娯楽の要素が強い時期もあったが、「近年は高齢者の自立や主体性がいわれるようになって、次第に地域づくりやリーダー育成も求められるようになってきた」という。中には、より専門的な講座もみられ、「一般の人がイメージしているより、かなり高度な内容を学んでいるところがある」そうだ。
久保田教授は高齢者大学について、「現代の課題に沿ったプログラムを行うなど、社会を凝縮した形の一つといえる。今後も、高齢社会を生きるために必要な内容が盛り込まれていくだろう」とみている。



