スペイン南部コルドバ近郊で2026年1月に発生した高速列車の脱線衝突事故。当初は単なる不具合による事故と見られていたが、調査が進むにつれ、鉄道大国スペインの抱える深刻な構造問題が浮かび上がってきた。
新線投資偏重で老朽化するインフラ
Adif(スペイン鉄道インフラ管理会社)が2025年に公表した報告書によると、2022年の新線建設投資額は13億3347万ユーロ(約2458億円)だったが、2023年には16億9393万ユーロ(約3122億円)、2024年には20億7220万ユーロ(約3820億円)と右肩上がりに増加している。一方、設備更新費用は2022年が2億0257万ユーロ(約373億円)、2023年が2億3810万ユーロ(約438億円)、2024年が2億9010万ユーロ(約534億円)と金額自体は増えているものの、新線投資の増加に伴い、インフラ更新への投資割合は減少していた。
このような状況下で、民間の「イリョ(iryo)」とフランス国鉄が高速列車運行に新規参入し、列車本数が大幅に増加。競争激化により利用者数は増え、多くの列車が満席で運行されるようになったが、インフラへの負担は著しく増大した。システム全体の維持管理能力を上回る事業拡大が、破滅的な結果を招いた可能性が指摘されている。
事故後の対応と今後の課題
事故後、プエンテ運輸大臣はインフラ維持管理と安全性向上のため、2026年に8億6100万ユーロ(約1587億円)を投資し、2030年には11億ユーロ(約2028億円)にまで引き上げると表明した。過去数年と比較すれば大幅な増額だが、インフラ維持への懸念が完全に払拭されるかは不透明だ。
スペインは日本の新幹線を上回る路線網を持つ鉄道大国であり、高速鉄道網の急速な拡大が進んできた。しかし、新線建設に重点を置くあまり、既存設備の維持管理が軽視されてきた実態が明らかになりつつある。今回の事故調査を通じて、鉄道運営の透明性や安全性に対する信頼が揺らぐ中、今後の対策が注目される。



