2025年8月、大阪市中央区の繁華街・道頓堀で発生した雑居ビル火災により、消火活動中の消防隊員2人が死亡した事件で、大阪府警は2026年7月14日、火のついたたばこのポイ捨てが原因として、大阪市都島区の会社員の男(35)を重過失失火容疑で書類送検した。府警は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。
火災の経緯と容疑者の行為
発表によると、男は2025年8月18日午前9時30分ごろ、大阪市中央区宗右衛門町の東西に隣り合う6階建てと7階建てのビル2棟前の遊歩道でたばこを捨て、散乱していたペットボトルやポリ袋などに着火。火は室外機を通じてビル2棟に燃え移り、約300平方メートルを焼損した疑いがある。府警は認否を明らかにしていない。男は当時、ビル内の飲食店従業員で、日常的に周辺でポイ捨てをしていたという。
犠牲者とバックドラフト現象
火災は同日午前9時45分ごろ発生。浪速消防署消防監の森貴志さん(当時55歳)と同消防司令補の長友光成さん(同22歳)が殉職し、別の消防職員4人と女性1人の計5人が負傷した。2人は殉職後に特別昇任した。府警と大阪市消防局によると、火災は6階建てビルの外壁に設置された大型広告物を伝って短時間で拡大。森さんと長友さんが東側の7階建てビルの6階で消火活動中、別の隊員が5階の扉を開け、外部から空気が流入して爆発的に燃える「バックドラフト現象」が発生。2人は煙や熱気で逃げ場を失い、酸素欠乏による窒息で死亡した。
過失の判断と大型広告物の問題
府警は、男に火災の急拡大やバックドラフト現象の予見はできなかったと判断し、重過失致死傷容疑の適用を見送った。大阪市消防局の指揮官らに対する業務上過失致死傷容疑についても検討したが、同じ理由で過失は認められないとした。捜査関係者によると、府警は発生直後、西側の6階建てビル1階の室外機付近が激しく燃えていたことを特定。防犯カメラの映像から男が浮上した。
大阪市消防局の事故調査委員会は2026年1月に報告書を公表。火災拡大の要因としてビル外壁の大型広告物を挙げ、建築基準法で義務づけられた不燃材料が使われていなかったと指摘した。市の調査では、2026年3月末時点で道頓堀川沿いの大型広告物の半数以上に不燃材料が使われていなかった。横山英幸市長は14日、「たばこのポイ捨ては絶対にやめてほしい」とした上で、大型広告物について「法令を順守した広告物にしていくため、チェック体制の強化を進めている」と述べた。
遺族のコメントと懸念
府警は14日、大型広告物が建築基準法に違反していたとして、捜査書類を大阪地検に送付した。同法では一般的に、過去に行政指導や行政処分が行われていれば刑事処分の対象になるが、今回はされておらず、不起訴になるとみられる。
森さんの遺族は14日、大阪市消防局を通じて初めてコメントを出した。森さんについて「最初に思いつくのは、優しく温和といったところです。重たい荷物を持って困っているご年配の方がいれば、自然と手を差し伸べるような人でした。とても子煩悩で、疲れていてもよく子どもの面倒を見てくれました」と述べた。書類送検については「出火原因が人災とわかり、悔しい気持ちがさらに強くなり、やりきれない気持ちでいっぱいです。2人の尊い命がこのような形で奪われたこと、非常に残念でなりません」とした。火災拡大の要因とされる大型広告物にも言及し、「火災からもう1年となる今も、建築基準法に違反している看板が掲げられていることに恐ろしさを感じます。何のために建築基準法があるのか疑問にすら思います。このようにあまり守られていない法律に関しては再度厳しく法整備していかないと、またいつか同じようなことが起こるのではと懸念しております」と記した。



