川崎市は、川崎港内の民間工場桟橋に係留されていた遊覧船が浸水で傾き、他の船舶の航行に支障を及ぼす恐れがあるとして、約3300万円をかけて行政代執行により撤去する方針を固めた。放置船舶を巡る問題は全国で発生しているが、法整備が追いつかない現状が浮き彫りとなった。
係留から放置までの経緯
市によると、問題の遊覧船は2018年10月ごろから、桟橋所有者である工場との契約に基づき係留されていた。当初は横浜や東京方面への航行が確認されていたが、市は運賃収益を目的とした遊覧船の停泊が、条例で「工業港区」と定めた桟橋の利用目的から逸脱するとして、運航会社と工場に移動を指導した。
その後、運航会社と工場の間で裁判が始まり、係留状態が継続。会社側が敗訴し判決が確定した後も、船は放置されたままとなった。
浸水と油流出で緊急対応に
2025年2月、強風で遊覧船が傾き浸水し、油の流出も確認された。市が改めて現状を確認したところ、運航会社と工場のいずれも資金面などを理由に撤去する意思がないことが判明。このため、他の船舶の安全な航行に支障が出かねないとして、市は行政代執行を決断した。
代執行は6月17日から約1カ月かけて実施される予定だが、船内にはゴミなどが堆積しており、費用がさらに膨らむ可能性もある。
費用回収と法的限界
市は代執行にかかった費用を遊覧船の所有者と運航会社に求める方針だが、どこまで回収できるかは不透明だ。さらに、両者を港湾法違反の疑いで川崎海上保安署に告発したが、罰則は「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」にとどまる。
こうした状況に、市議からは「放置した者勝ちであるのはいかがなものか」との指摘も上がっている。
港湾法の想定外
市によると、港湾法のルール上、本来の利用目的以外で桟橋の係留を認めた契約自体は違法とはならず、工場側の責任を問うのは難しいという。市港湾局幹部は「港湾法の想定外の事案」と述べ、所有者と運航会社への刑事告発も、港内の「放置等禁止区域」での放置を問うことしかできなかった。
また、条例に基づく指導には強制力がなく、問題のある船舶の係留・放置に関して「手も足も出なかった」のが実情だ。放置船舶問題は全国各地で発生しているが、法の抜本的な見直しが求められている。



