人気ダンスグループ「DA PUMP」のいわゆる「推し活」仲間から約1400万円をだまし取ったとして、川崎市の女(39)が詐欺罪で起訴された事件で、被害に遭った40代の女性が読売新聞の取材に応じ、「ファン同士が支え合う優しさにつけ込まれた」とやりきれない思いを明かした。松山地裁で開かれている公判で、被告の女は「詐欺をしていない」と否認している。
「母が急死」など虚偽のメッセージ
起訴状によると、被告は2021年4月から2024年6月頃にかけて、愛媛県内に住む40歳代の女性に対し、LINEやメールで「母親が急死して葬儀代が必要」「がんの疑いがあり、入院費を貸してほしい」などと虚偽のメッセージを送り、借金名目で約1400万円を詐取したとされる。被告は昨年11月以降、愛媛県警に2回詐欺容疑で逮捕され、松山地検に起訴された。
検察側の冒頭陳述によると、被告は2019年7月頃、SNSで女性と知り合った。共通の「推し」であるDA PUMPのグッズ交換を行い、LINEやメールで連絡を取り合うようになった。検察側は、被告がその後、様々な虚偽のメッセージを送り、女性から多額の現金を自分の口座に入金させたと指摘している。
被告は「知人がなりすまし」と主張
これに対し、被告は被告人質問で、仕事関係の知人が被告になりすまして自分のLINEアカウントを勝手に使い、女性と連絡を取っていたと主張。女性から振り込まれた金については「だまし取った金だとは知らず、事件に巻き込んでしまって申し訳ない」と述べた。検察側は「身に覚えのないメッセージになぜ気づかなかったのか」と追及したが、被告は「はい」とだけ答えた。
被害女性は、被告を直接見たのは公判が初めてだったという。読売新聞の取材に「被告の写真を見たことはあったが、2人とも見に行く予定だったライブがコロナ禍で中止になり、SNSでのやり取りがほとんどだった」と話した。女性がSNSでファンの交流の輪を広げる中で知り合ったのが被告だった。
年賀状やぬいぐるみ、親密な関係に
2020年初めには被告から年賀状が届き、メンバーに見立てて作ったというクマのぬいぐるみの写真が印刷されていた。2人はLINEでやりとりするうちに、自らの境遇や家族についても相談し合う関係になったという。事態が急転したのは2021年4月。被告から「子宮がんになった。どうしよう」「お金もないし、病気にもなって死ぬかもしれない」とLINEで連絡があった。切迫した様子に戸惑いながらも、女性は力になれたらと10万円を振り込んだ。
その後、「母親が亡くなった」「姉が精神病で入院する」などのメッセージが送られるようになった。2022年秋頃には、被告からDA PUMPと連絡を取れると打ち明けられ、メンバーを名乗る人物からメールが届いた。サイン入りの写真が送られてきた一方、「活動休止になる」「レコード大賞を辞退しないといけない」と金の振り込みを求められたという。
被害女性「精神的にも経済的にもつらい」
昨年に被告からの連絡が途切れたことから、女性は不審に思い、所属事務所に問い合わせたところ、警察への相談を勧められた。女性はショックでDA PUMPが出演する音楽番組やライブ映像を見ることができなくなったといい、「精神的にも、経済的にもつらい」と漏らした。当初、被告の振る舞いは心から推し活を楽しむ様子だったが、純粋なファンだったのか、詐欺の相手を見つけるためだったのか、今となっては分からない。女性は「同じような思いをする人がないよう、今回の被害を知ってほしい」と語った。
次回の公判では検察の論告求刑、弁護側の最終弁論が行われ、結審する予定だが、日程は決まっていない。
SNS型ロマンス詐欺が急増
SNSを使って対面することなく、好意や親近感を抱かせて金銭をだまし取る犯行は「SNS型ロマンス詐欺」と呼ばれ、被害が急増している。警察庁によると、2025年(確定値)の認知件数は5645件(前年比47.6%増)、被害額は546億4000万円(同36.3%増)に上った。相手からの接触手段はダイレクトメッセージが9割以上で、被害者は男女とも40~60歳代が大半を占めるという。推し活を巡っては、ファン心理につけ込み、入手が難しいライブチケットやオリジナルグッズを譲るとインターネット上でうたい、高額な代金をだまし取る詐欺事件も発生している。



