卑劣な盗撮事件が後を絶たない。西川口榎本クリニック副院長で精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは「こうした事件は加害者の資質だけで片づけられがちだが、それだけでは見えてこない問題がある」という。
駅のトイレを使えない女性たち
エスカレーターで背後をそれとなくうかがう。駅のトイレの個室で不審な荷物がないかチェックする……。たとえ盗撮などの被害に遭ったことがなくても、これらをほぼ無意識レベルで行っている女性は多いという。なかには、「そもそも不特定多数の人が利用する駅のトイレは、絶対に使わない」という人すらいるようだ。
一方、男性はどうだろうか。エスカレーターで背後に意識を向けることがなければ、駅のトイレで盗撮カメラの有無をチェックすることも、ほぼない。そもそも、「盗撮をおそれて、公共トイレの利用を控える」という発想をする男性は、ほぼいないだろう。
盗撮に怯えなくていいこの状況こそが、「男性の特権」に他ならない。特権というと、何か大きな得をしているように聞こえるが、社会学的には「ある特定の属性に属しているだけで、労なく享受できる、構造的な優位性」を指す。簡単にいうと、「面倒なことをわざわざ考えなくてもいい」状態、これが特権である。
男性をターゲットに盗撮し続ける男性
しかし近年、男性の特権を揺るがすような事態が起きている。2025年2月には、埼玉県川口市の公立高校で、男子生徒の着替えを盗撮した30代の男性教員が逮捕された。この教員は、生徒たちの部活の顧問で、合宿所の脱衣所で盗撮をしていたことが報じられている。
斉藤さんが担当したクリニックの受診者にも、男性をターゲットに盗撮を繰り返す会社員・後藤直樹氏(仮名)がいた。彼は男性社員寮への侵入を皮切りに、サウナや公衆浴場でも犯行を重ねていた。
当初、斉藤さんは後藤氏の話を女子寮や女風呂での出来事だと思い込み、「どうやって女風呂に侵入したのですか?」と彼に問いかけた。



