警察庁によると、今年上半期に全国で発生した特殊詐欺の被害額は前年同期比1.5倍の約1816億円(暫定値)で、過去最悪を記録した。捜査関係者が「勢いが止まらない」として警戒するのは、「SNS型投資詐欺」と「SNS型ロマンス詐欺」だ。
50~60代の被害が最多
警察庁の統計では、SNS型投資詐欺の被害は前年同期比で2倍以上となる約797億円を記録。SNS型ロマンス詐欺も約246億円と、前年同期とほぼ変わらない規模の被害が確認されている。
特殊詐欺の被害者は高齢者が多いとのイメージが強い。一方、投資、ロマンス両詐欺で目立つのは現役世代といえる中高年の被害者だ。SNS型投資詐欺の被害者の最多層は50~60代。認知件数としては3123件で全体の53%を占める。被害額で見ると、約474億円で全体の6割に迫る数字だ。
SNS型ロマンス詐欺でも、50~60代の認知件数は全体の54%となる1344件。被害額は全体の62%にあたる約153億円に達する。
不安と寂しさに付け込む手口
なぜ、50~60代に被害者が多いのか。捜査関係者の分析からは〝50~60代ならではの危機〟ともいうべき実情が透ける。SNS型投資詐欺の背景にあるとみられるのが「将来への不安」(捜査関係者)だ。預貯金の低金利や年金制度への懸念から、老後資金に焦りを覚えた中高年の資産運用への関心は高い。そこに詐欺グループが忍び寄り、被害に遭うケースが増えている―というのが、捜査関係者の見立てだ。
SNS型ロマンス詐欺のキーワードは「寂しさ」だという。「若いころと違って交友関係は狭まり、元気もなくなってくる。会ったこともない人に対し、メッセージのやり取りだけで親近感を覚えてしまう」(捜査関係者)いずれも心のもろさに付け込む手口であり、対策は容易ではない。
冷静になり周囲に相談を
警察庁は特殊詐欺被害者が犯行グループと接触する最初のきっかけとなった媒体も分析している。SNS型投資詐欺の認知件数別で最多を占めた媒体は「インスタグラム」(1403件)。X(677件)▽ライン(631件)▽投資サイト(553件)▽フェイスブック(552件)―と続き、有名人を騙(かた)る偽動画による悪質な勧誘が取り沙汰されるユーチューブは438件で6番手だった。いずれも画面上に表示されるバナー(画像)型広告で被害者を引き付け、ラインなどのグループトーク機能のやり取りに誘導するために使われたとみられる。
SNS型ロマンス詐欺で最多はマッチングアプリ(753件)。インスタグラム(486件)、フェイスブック(449件)と続く。フェイスブックが多いのは比較的利用者の年齢層が高いことが要因とみられ、マッチングアプリの件数の多さは中高年層への浸透がうかがえると捜査関係者はみている。
捜査関係者はSNS型投資詐欺について「SNSのグループトークに誘導する手口に出合ったら警戒してほしい」と強調。SNS型ロマンス詐欺についても「会ったこともない人からお金についての話をされたら、詐欺を疑ったほうがいい」と警告する。
こうした詐欺被害について、警視庁幹部は、「やり取りをする中でも、冷静に考えればおかしいと気付けることは多い」と話す。こまめに周囲の人に相談するなどして、少しでも立ち止まって考えることが重要といえそうだ。



