熊本地震の被災地で避難生活を送る障害のある子どもたちを支えるため、特別支援学校などに居場所を確保する取り組みが行われている。障害児は環境の変化に敏感で、避難生活のストレスを和らげる狙いがある。一方で、障害児とその家族の避難先を巡っては、障害者らを対象とする「福祉避難所」の利用が進まないなどの課題も出ている。
支援学校で遊び場を提供
熊本県八代市の市立八代支援学校では、被災地支援を手がけるNPO法人「ROJE(ロジェ)」(東京)が市教育委員会などに働きかけ、同校に通う児童・生徒を対象にした居場所支援を始めた。ボランティアの大学生らとバレーボールや紙コップの積み上げなどをして遊ぶ子どもたちの姿が見られた。
知的障害のある中学1年の長男(13)と訪れたパート従業員の女性(40歳代)は、自宅の壁が剥がれるなどし、実家のアパートに避難。長男には大きな音を出さないよう我慢させていたといい、「いつも通う学校なので、安心して連れて来られた。地震前のような笑顔が見られてよかった」と話した。
能登半島地震での教訓
NPO法人は2024年の能登半島地震で被災した石川県七尾市でも、子どもの遊びや学びの場を提供した。多くの子どもが訪れた一方、知的障害児の保護者から「障害児を連れて行っていいのかわからなかった」と声をかけられたという。
今回は支援学校に通う子ども専門の支援を行うことにした。知的障害や発達障害がある子どもは、突然大きな声を出したり、大人数の場所で混乱したりすることもあるため、専門家の指導を受け、周囲の様子が目に入らないようにする段ボール製の仕切りや、子どもが一人になって落ち着けるテントも設置した。
福祉避難所の利用は一部に
一方、避難所では障害児への対応があまり進んでいない。目に見えにくい障害は理解を得にくい場合もあり、避難所に行くことをためらう保護者は多い。高齢者や障害者ら一般の避難所での生活が難しい被災者を対象にした福祉避難所は、障害児も受け入れるが、熊本県などによると、今回の地震で福祉避難所を設置したのは熊本市や八代市、宇城市、氷川町、嘉島町、益城町、御船町の7市町。このうち知的・発達障害児らが実際に避難してきたのは熊本市と嘉島町で6世帯29人にとどまる。
小学2年の長女に知的障害があり、親戚の家に避難する八代市の会社員女性(42)は「福祉避難所がどこにあるかわからず、高齢者の場所という印象も強い。親戚がいなかったら車中泊を選んだだろう」と明かす。県の担当者は「福祉避難所がしっかり活用されるよう、市町村と周知を進めたい」と語った。
「福祉子ども避難所」への期待
障害児と家族の避難先として近年注目されているのが、福祉避難所の一つの「福祉子ども避難所」だ。内閣府は2024年11月、都道府県に対し、障害児が慣れ親しんだ場所に避難することが望ましいとして、特別支援学校を福祉避難所に指定することを進めるよう通知を出した。
2016年の熊本地震を機に、熊本市は障害児と家族の避難所にするため、市内の特別支援学校8校を指定。今回の地震では2校に、計5世帯26人が避難した。ただ、こうしたケースは一部にとどまる。日本小児神経学会が22年に全国の特別支援学校を対象に行った調査では、回答があった489校のうち、子どものための福祉避難所として指定されていたのは10校(2%)にとどまった。多くの学校が人手や設備を課題に挙げるなど整備は進んでいない。
同学会災害対策委員長の東田好広・徳島大病院非常勤講師は「特別支援学校を避難所に指定することで環境の変化も少なく、慣れ親しんだ人と過ごすことができ、安心感が持てる。整備が広がってほしい」と話す。



