今年1月、東京地裁の執行官ら2人が強制執行中に刺され、賃料保証会社の男性社員が死亡した事件で、東京地検は7月24日、現行犯逮捕されていた無職の男(41)を殺人などの罪で起訴した。強制執行とはどのような手続きで、どのように実施されているのか。大阪地裁で執行官を13年間務めた桜井俊之さん(68)に聞いた。
強制執行の本質は「約束を守らせる手続き」
桜井さんは現場で「約束を守ってもらうための手続き」と説明していた。近代社会では、個人間の約束事に国家はむやみに介入してはならないという「私的自治の原則」がある。しかし、約束が守られないからといって、当事者が無理やり履行させることは禁止されている。裁判で勝訴した場合などに、当事者に代わって国家機関が強制的に約束を守らせるのが「強制執行」の制度だ。
事件の背景と対策
今回は建物明け渡しをめぐる強制執行中に起きた事件だった。対策として、明け渡しを求める相手の情報を事前に得ておくことが重要だ。ただ、当然ながらいろんな方がいて、想定を超える行動をされると、今回のようなことも起こり得る。対応力を鍛えるためには、執行官の危機管理マニュアルや研修を充実させる必要がある。事例研究やロールプレーで適切な対応を学び、相手の心理を理解することが大切だ。
桜井さんは執行中に抵抗や妨害を受けた経験もある。強制執行の要は「相手を追い詰めない」ことだと語る。



