終戦後、新宿駅前の闇市から始まった食事処「ひょっとこ」が、歌舞伎町で70年以上にわたり愛され続けている。現在の店主・文江さんと娘の円さんが切り盛りするこの店には、ホストや若い女性、かつては大物芸能人やヤクザも訪れたという。
多彩な客層と昭和レトロの魅力
「『お母さん、食べに来たよー』って、毎日ウインナーエッグとご飯を注文するホストの方がいるんですよ。『飽きないの?』って聞くと、『飽きないよ、ウインナーが大好きなんだ』って。今日もこの後、来ると思いますよ」と文江さん。
娘の円さんはこう続ける。「常連の20代のお姉さんたちが、ご飯を食べながら、『昭和にタイムスリップをしたら何をしたいか』って話をずっとしてたんです。この店に来ると昭和を想像するのでしょうね」
近年、昭和レトロブームの中、ひょっとこの雰囲気は作られたものではなく、70年以上の年月で築かれた本物だ。カウンターに並ぶおかずは家庭の味で、壁には良心的な値段のメニューが貼られている。
終戦後の闇市から始まった歴史
文江さんは、「料理を食べて、『これ、おばあちゃんの味だ!』って言ってくれる子もいます。『若いのに煮物が好きなの?』って聞くと、『大好き』って。実家に戻れない子もいるだろうし、なるべくいろいろなものを作ってあげたいと思っています」と語る。
ひょっとこを開店したのは「おばあちゃま」で、後に文江さんの夫となる茂さんの親戚。終戦後、新宿駅前の闇市から始まり、1950年頃に区役所通りに移転。おばあちゃまと茂さん、茂さんの叔父と叔母で切り盛りした。店名「ひょっとこ」は、俳句をたしなんでいた叔父がつけた。
大物芸能人が贔屓にしたのり弁や、指詰め前のヤクザが最後の晩餐に訪れた逸話も残る。血の気の荒い客も多かったが、店内で揉め事はなかったという。



