岐阜県立大垣養老高等学校の「美濃柴犬研究班」に所属する生徒たちが、飼育する美濃柴犬「杏子」の出産に立ち会い、生まれた子犬のうち1匹が死産となり、母犬がその遺体を食べてしまうという衝撃的な現実を目の当たりにした。この経験を通じて、生徒たちは命の尊さと当たり前の日常が決して当たり前ではないことを深く学んだ。
出産の一部始終と死産の衝撃
杏子は8時間に及ぶ長い出産を経て複数の子犬を産んだが、そのうちの1匹(四号さんと呼ばれていた)は未熟児で、生まれる前にすでに母体内で死亡していた。生徒の弥玲ちゃんは「こういうことって起こるんだね…。未熟児で、生まれないかも…と覚悟はしていたけど…。こうして生まれてくるのが当たり前で、元気なのが当たり前だと思って、これまで私も生きてきたけど…。当たり前のことが、当たり前じゃないんだよね…」と語り、深い悲しみとともに命の厳しさを受け止めた。
出産後、杏子は疲れ果てており、担当教諭の藤木先生は杏子と生まれた二号さんをかかりつけの動物病院に連れて行った。二号さんは生まれる際、杏子が胎胞を破ろうとして誤って左後ろ足の小指をかみちぎってしまっていた。獣医は「かみちぎられた指を縫って元どおりにするのは、難しいですね…」と判断し、二号さんの左後ろ足の小指を切断することに決めた。これにより二号さんは小指を失ったが、日常生活には支障がないと見られている。
レントゲン写真が示した衝撃の事実
獣医は二号さんの傷を縫った後、杏子のレントゲン撮影を行った。その結果、「胃の中に小さなかみ砕かれた骨が写っていますね…。やっぱり生徒さんが見たのは未熟児の子犬でしょう。死産だったんですね…。おそらく、最初のレントゲンで見たときからまったく育たず、すでにおなかの中で死んでしまったものと思われます」と診断した。つまり、弥玲ちゃんが見た四号さんは死産であり、杏子はその遺体を食べてしまったのだ。
藤木先生は杏子と二号さんを連れて学校に戻り、生徒たちにレントゲン写真を見せて事実を伝えた。生徒たちは真剣な表情で写真を見つめ、藤木先生は「これも生徒たちにとっては『命』の勉強なのだ…」と感じた。
命の授業から学んだこと
生徒たちは日誌に四号さんへのメッセージを綴った。弥玲ちゃんは「宿った命の中には、生まれてくることができなかった命もたくさんある…。元気に生まれてきた子犬には、あの四号さんの命の分まで、幸せになってほしい…」と記した。また、「ぼくたち元気に生まれてきた命は、そういった命の分まで幸せにならなくちゃいけないってこと。人間がこの世に生まれてきたことで、果たすべき約束はただひとつ!『自分が必ず幸せになる』ってこと。具体的には『預かったぼくたちの命を幸せにする』ってこと。これこそが『生まれた命との約束』なんだ」と綴っている。
四号さんのために準備していたクリーム色の首ひもが、その小さな首に巻かれることはついになかった。しかし、この経験は生徒たちにとって生涯忘れられない、命の重みを実感する貴重な学びとなった。



