原発事故時の医療継続、どう備えるか 福島の教訓からBCP整備の現状と課題
原発事故時の医療継続 福島の教訓とBCP整備の現状

原発事故時の医療継続、どう備えるか 福島の教訓から見える課題

東京電力福島第一原発事故のような原子力災害が発生した際、医療機関は患者や職員の安全を確保しながら、いかに医療を継続するのか。この問いは、事故からまもなく15年を迎える今も、現場で模索が続いている重要な課題です。事業継続計画(BCP)の整備は進んでいるものの、多くの医療施設では未だ途上にある現状が浮き彫りになっています。

島根原発近くの病院での訓練事例

中国電力島根原発が立地する松江市では、原発から南東約9キロに位置する松江赤十字病院が、昨年4月から原子力災害を想定したBCPの見直しを開始しました。この取り組みの一環として、2025年11月14日には、島根原発から被曝傷病者が搬送される想定で大規模な訓練が実施されました。訓練では、放射線防護装備の着用や除染プロセスの確認など、実践的なシナリオを通じて、医療スタッフの対応能力を高める試みがなされています。

しかし、現場の関係者からは「想定が不十分では」との声も上がっています。原発事故が起きた場合、病院自体が被災したり、スタッフの避難が必要になったりする可能性があり、BCPの見直しは急務です。福島の教訓を踏まえ、より現実的な計画づくりが求められています。

福島の教訓と全国的なBCP整備の現状

福島第一原発事故では、医療機関の機能停止や患者の避難遅れなど、多くの課題が明らかになりました。これを受けて、国は原子力災害時の医療継続ガイドラインを策定し、全国の医療施設にBCPの整備を促しています。しかし、実際の進捗は地域によってばらつきがあり、特に原発立地地域以外では意識が低い傾向が見られます。

BCP整備の主な課題としては、以下の点が挙げられます。

  • 資金不足: 防護装備や訓練費用の確保が困難な施設が多い。
  • 人材育成: 放射線医療に精通したスタッフの不足が顕著。
  • 連携の弱さ: 自治体や他医療機関との協力体制が不十分。

これらの課題を克服するためには、国や自治体による支援強化と、医療現場での継続的な訓練が不可欠です。福島の経験を生かし、より強靭な医療システムの構築が急がれています。

今後の展望と提言

原子力災害は「想定外」を前提に備える必要があります。医療機関のBCP整備を進める上で、以下の取り組みが重要と考えられます。

  1. 定期的な訓練の実施: 実践的なシナリオでスタッフの技能を磨く。
  2. 地域連携の強化: 自治体や近隣病院と情報共有を密にする。
  3. 技術革新の活用: 遠隔医療やAIを活用したバックアップシステムの構築。

福島第一原発事故から得られた教訓は、単なる過去の事例ではなく、未来の防災に活かすべき貴重な知見です。医療継続の備えが万全になるまで、現場の努力と社会全体の関心が求められています。