絵本が伝える防災の知恵と命の尊さ
神戸市中央区にある防災研究機関、人と防災未来センターでは、災害に備える重要性を描いた絵本が展示されています。訪れた人々は実際に手に取り、読むことも可能です。この取り組みは、絵本を通じて100年先まで防災の知恵を届けようというセンターの企画によるもので、公募で選ばれた原案からこれまでに4作品が絵本化されました。
東日本大震災を題材にした物語「たったひとつのおやくそく」
展示されている絵本の一つが、「たったひとつのおやくそく」です。この作品は、津波で祖父を失った女児が主人公で、大地震が発生した際には親がいなくてもすぐに高台の神社へ逃げることを母親と約束します。その後の地震の際、女児は一人で避難を実行し、命を守ることができました。物語は、来月11日に発生から15年を迎える東日本大震災を題材としており、防災の具体的な行動を子どもたちに分かりやすく伝えています。
物語の終わりでは、高台に逃げて助かった女児が、他の大切な人とも同じ約束を交わすよう教えられ、読者の想像力をかき立てながら避難方法を考えさせる構成となっています。
絵本の力を防災教育に生かすセンターの思い
人と防災未来センターの企画ディレクター、平林英二さん(60)は次のように語ります。「様々な展示物で災害の教訓を伝えるように、絵本の力を防災にも生かしたいと考えています。絵本は単に子ども向けのものではなく、大人も命の大切さや生き方について深く考えさせられる機会を提供できるのです。」
この考えは、ノンフィクション作家の柳田邦男さんの主張とも一致しています。柳田さんは著書「人生の1冊の絵本」の中で、絵本は幼少期、子育て期、中高年期と「人生に3度」味わえると説き、心の持ち方や人間関係について絵本から「大事な気づきを得ることができる」と指摘しています。
絵本から学ぶ多様な教訓と今後の展望
絵本を通じた防災教育は、単に避難方法を教えるだけでなく、以下のような幅広い気づきをもたらします。
- 災害時の具体的な行動計画の重要性
- 家族やコミュニティでの約束事の共有
- 命の尊さと生きる意味についての内省
- 想像力を働かせた防災対策の構想
人と防災未来センターでは、今後も公募作品を基にした絵本の制作を続け、より多くの世代に防災の知恵を伝えていく方針です。絵本という親しみやすい媒体を活用することで、災害の教訓を身近に感じ、実践的な備えにつなげることを目指しています。
絵本から学ぶことは多く、子どもだけでなく大人にも深い影響を与えることが明らかです。防災教育の新たな手法として、絵本の可能性がさらに広がることが期待されます。