東京大学が入試で重視しているのは、単なる知識量ではなく、基本的な知識を「柔軟な発想によって使いこなす力」だといいます。東大が考える“地頭力”とは、具体的にどのような力なのでしょうか。
東大が考える「本当の頭の良さ」
ある年の東京大学の入学式で、当時の総長はこう新入生に語りかけています。
「それぞれ試験の手応えはいかがだったでしょうか。私たちは知識の量ではなく、基本となる知識を"柔軟な発想によって使いこなす力"こそが、大学での学びへの備えとして最も大切だと考えています。そのような期待を込めて出題させていただきました」
この言葉には、東京大学が考える「本当の頭の良さ」が凝縮されています。つまり、東大は「基本となる知識を柔軟な発想によって使いこなす力」こそを地頭力と定義しており、それを入試問題で測ろうとしているというわけです。
記述式で問われる思考プロセス
東京大学の入試問題はすべての問題が記述式で構成されており、単純な暗記では太刀打ちできない問題ばかりです。「なぜそうなるのか?」を問う問題が多く、答えを知っているだけでは不十分で、その答えに至るまでの思考プロセスや、背景にある構造を理解していなければ解けない問題が出題されます。
確かに、「鎌倉幕府が成立したのは何年ですか?」という問題に「1185年」と答えられることは、将来別に役に立たないでしょうし、クイズ番組と同じです。しかし、「なぜ鎌倉に幕府が開かれたのか? その歴史的背景と意義を説明しなさい」と問われると、もしかしたら将来につながるかもしれません。
後者の問いに答えるためには、単に年号を覚えているだけでは不十分です。平安時代末期の社会情勢、武士の台頭、朝廷と武家の関係、経済構造の変化……。こうした複数の要素を理解し、それらを統合して説明する力が必要になります。そしてその過程で、現代との比較に知識を応用できるかもしれません。
「知識を使いこなす力」とは
これこそが、「知識を使いこなす力」であり、東大が求める地頭力だと言えます。知識そのものは決して無意味ではありません。しかし、その知識が「静止した状態」で頭の中に置かれているだけでは、本当の意味で「頭を使っている」とは言えないのです。
『地頭力の正体』(西岡壱誠 著、中山芳一 監修/東洋経済新報社)から抜粋してご紹介しました。



