脳の専門家が説く負の感情の乗りこなし方 1日5分のぼんやりで変わる
脳の専門家が説く負の感情の乗りこなし方 5分のぼんやりで

負の感情を乗りこなす脳科学的アプローチ

抑えきれない「負の感情」に悩む人は多い。脳神経外科医の菅原道仁氏は、最新の研究を基に、感情をコントロールする方法を解説する。ハーバード大学医学部のブリッタ・ヘルツェルらの研究では、8週間のマインドフルネスプログラムに参加した人の脳で、記憶や感情の調整に関わる海馬などの灰白質が増加したことが報告されている。

脳は訓練で変わる

ウィスコンシン大学のリチャード・デビッドソンらの研究でも、8週間のマインドフルネス訓練によって前頭部の脳活動パターンが変化し、ネガティブな気分が減少することが示された。これらの研究は、訓練によって脳の活動パターンが変わりうることを示している。感情は永久に壊れるものではなく、適切な刺激によって再び動き始めることができるのだ。

研究ごとに結果の強さや再現性には差があるものの、注意の向け方や心の扱い方を変えることが脳の働きに影響することは、多くの研究が支持している。神経科学者のファデル・ゼイダンらの研究によれば、瞑想経験のない参加者でも、1日20分のマインドフルネス訓練を4日間行っただけで、不安や疲労が軽減し、ワーキングメモリや実行機能が有意に改善した。つまり、長年の修行は必要なく、短期間の体験でも脳のパフォーマンスは向上しうる。

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「1日5分のぼんやり」の効果

この事実は、「まずは1日5分でも空白をつくる」という試みが、決して気休めでないことを裏づけている。たとえわずかな静寂でも、意識的に脳を休ませれば副交感神経が優位になり、脳は回復モードへと切り替わる。すると、忙しさに押し込められていた生身の感情が、ふわりと意識の表面に浮かび上がる余裕が生まれる。この短い「5分のぼんやり」こそが、自分自身の感覚を取り戻すための、もっとも手軽で確かな第一歩なのだ。

こうした「自分を観察する」営みは、古今東西の智慧が求めてきた境地でもある。ソクラテスが哲学の指針とした「汝自身を知れ」という言葉は、自らの思考や感情を客観的に把握する「メタ認知」の重要性を説いた、哲学的枠組みの原点といえる。鎌倉時代の禅僧・道元が説いた「只管打坐」も、坐禅を通じて自己を観察する実践であり、現代のマインドフルネスと通じるものがある。

脳科学の知見は、こうした伝統的な実践が脳に与える影響を科学的に裏付けている。負の感情に悩むときこそ、まずは5分間、何もせずにぼんやりと過ごしてみてほしい。それが、感情を乗りこなす最初の一歩となる。

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