精神科医の和田秀樹氏が、著書『60歳からの人間関係整理術』(河出新書)の中で提唱する「人生二毛作」という結婚観が注目を集めている。同氏は、平均寿命が延びた現代において、気の合わない配偶者と我慢して過ごすことはもったいないと指摘。1回目の結婚は子育てなどの社会的な役割と割り切り、老後に本当に気の合うパートナーを見つけて再婚することを積極的に提案している。
熟年離婚は悪いことではない
夫婦は毎日顔を突き合わせる最も親密な関係だが、定年退職や子どもの独立などで関係性は変化する。月に一度の外食でも会話が弾まず、温泉旅行が苦痛に感じられることもある。家にいても話題がなく、ペットを介してしか会話しないような状態では、居心地の悪さから一日中気が重くなることも少なくない。
「どうにも我慢できない、いつもイライラして仕方ないという状態に陥ったなら、離れることを考えてもいいのではないでしょうか。熟年離婚は積極的に考えるべき選択肢のひとつです」と和田氏は語る。
「人生二毛作」という新発想
男女ともに平均寿命が延びた現代、老後の生活は長期化している。多少気が合わなくても「先は長くないから我慢しよう」と消極的になるのは、楽しめるはずの人生を無駄にしてしまう。そこで和田氏が提唱するのが「人生二毛作」の考え方だ。
1回目の結婚は子育てなどの社会的な結婚と割り切り、様々な困難を乗り越えたある程度の年齢でその役割を終了とする。そして、本当に気の合うパートナーを探して再婚することで、残りの人生を楽しく過ごすことができるという。
「年齢的に介護が必要になる可能性も考慮し、『この人のオムツを替えられるか』というのも重要な要素になります」と和田氏は付け加える。
子どもが老後の再婚に反対する理由
しかし、熟年離婚や再婚には子どもからの反対があることも事実だ。和田氏は、子どもが親の再婚に反対する背景には、遺産相続や介護負担への懸念があると分析。子どもにとっては、新しいパートナーが親の遺産を相続したり、介護を押し付けられたりするリスクが気になるのだ。
「子どもが独立した後は、親自身の幸せを優先しても良いのではないでしょうか。子どもに理解を求める努力も必要ですが、最終的には自分自身の人生をどう生きるかが大切です」と和田氏は助言する。
離婚に踏み切れない「お金の壁」
熟年離婚をためらう最大の理由は経済的な不安だ。特に専業主婦だった妻側は、年金分割や住居の問題などで離婚後に生活が苦しくなるケースが多い。和田氏は、離婚前にしっかりと資金計画を立てることの重要性を強調する。
「離婚後の生活費や住居費を試算し、必要ならば働くことも視野に入れるべきです。また、年金分割や財産分与を適切に行えば、経済的に自立できる可能性も十分にあります」
年をとるほど「気が合うか」を求める
和田氏によれば、年齢を重ねるほど人間関係において「気が合うかどうか」が重要になるという。若い頃は社会的な立場や見た目でパートナーを選ぶことが多いが、老後は一緒にいて心地よいかどうかが最優先される。
「1回目の結婚は属性で選び、2回目の結婚は相性で選ぶ。これが人生二毛作の基本的な考え方です。気の合わない相手と無理に一緒にいるより、自分らしく生きられるパートナーを見つけることが、充実した老後への近道です」
和田氏の提唱する「人生二毛作」は、従来の結婚観に一石を投じるものだ。熟年離婚をネガティブに捉えるのではなく、新たな人生を切り開くチャンスと捉える視点は、長寿社会を生きる多くの人にとって参考になるだろう。



