日本よりも過酷なイギリスの鉄道酷暑事情
今年5月、日本各地で30度を超す真夏日が続出し、一部では35度を超す猛暑日も記録されるなど、異例の暑さとなった。しかし、これは日本だけの現象ではない。5月下旬、ロンドンは数日間にわたり記録的な暑さに見舞われた。イギリス気象庁によれば、5月26日にロンドン・キューガーデンで35.1度を観測。これは5月としては史上最高気温であり、平年最高気温の16〜19度を15度以上も上回った。
冷房なしがまだまだ普通
日本では35度の高温でも、ほとんどの鉄道やバスは冷房が効き、暑さ対策がなされている。しかし、イギリスは事情がまったく異なる。気候が冷涼であるため、インフラが暑さを前提に設計されていないのだ。家庭ではクーラーの使用が少なく、住宅は壁が厚く窓が少ない寒冷地仕様。交通機関も、ロンドン地下鉄の地下深くを走る路線の車両は依然として冷房なしのままである。名物の2階建てバスも基本的に冷房はない。
冷房の弱い車両は運用から外す
イギリス鉄道では、冷房機能が不十分な車両は猛暑日に運用から外されることがある。これは乗客の健康を守るための措置だが、結果的に運行本数が減少し、混雑が悪化する要因となっている。また、冷房のない地下鉄車両は、外気温が35度を超えると車内はさらに高温となり、灼熱地獄と化す。
地下鉄冷房化工事があだに
ロンドン地下鉄では、一部路線で冷房化の工事が進められているが、これがかえって問題を引き起こしている。工事のために線路や信号システムが変更され、予想外の気温上昇に対応できず、ダイヤの乱れや運休が発生している。特に、古い路線では冷房装置の搭載が構造的に難しく、完全な冷房化には長い時間がかかると見られている。
予想外の気温上昇に対応追いつかず
イギリスの鉄道網は、もともと冷涼な気候を前提に設計されているため、レールには熱による伸縮を吸収するための遊間が十分に確保されていない。そのため、35度を超えるような異常高温では、レールがゆがみ、列車の速度制限や運休を余儀なくされる。2022年7月には、イギリスで初めて40度を超える気温が観測され、多くの路線で運行が停止した。
鉄道網は猛暑に耐えられるか
気候変動により、イギリスでも猛暑日が増加傾向にある。鉄道事業者は、レールの耐熱性向上や冷房車両の導入を進めているが、予算やインフラの老朽化が課題となっている。特に、地下鉄の冷房化には大規模な改修工事が必要で、完了までには10年以上かかるとされる。イギリスの鉄道が、今後も増加する猛暑に耐えられるかどうかは、早急な対策にかかっている。
猛暑の日にユーロスター故障
さらに、国際列車ユーロスターも猛暑の影響を受ける。2022年7月の熱波では、ユーロスターの車両が高温で故障し、多くの列車が運休または遅延した。英仏海峡トンネル内は比較的涼しいものの、トンネル出入り口付近の気温が高くなり、車両の冷却システムが追いつかないことが原因とされる。
ロンドンの交通機関と暑さ対策の現状
ロンドン交通局は、一部のバス路線に冷房を試験導入しているが、全車両への普及には至っていない。地下鉄では、最新の車両には冷房が搭載されているが、古い車両は交換が進んでおらず、利用者は暑さに耐えるしかない。また、駅構内も冷房がなく、プラットホームは蒸し風呂状態となる。
日本と比較すると、イギリスの鉄道は猛暑に対する備えが圧倒的に不足している。しかし、気候変動が進む中で、イギリスもインフラの見直しを迫られている。今後の対策次第では、日本以上に過酷な状況が続く可能性もある。



