歴史的な円安に歯止めがかからない。貿易・サービス収支改善で実需の円売りは一段落し、巨額の為替介入も行われている。にもかかわらず、円安進行はマーケットに染み付いたままだ。高市早苗首相は「高市円安かどうかわからない」と述べ、自身の金融・財政政策の為替影響について明言を避けたが、実のところマーケットはどのように見ているのか。ブラックロックで世界指折りのリターンを叩き出した「伝説のヘッジファンド・マネジャー」塚口直史氏に聞いた。
バケツに穴が空いたような状態、GPIF活用は「金融抑圧」そのもの
現状は1ドル160円台が常態となり、マーケットでは170円台も意識され始めている。塚口氏は「今の日本は、バケツに穴が空いたような状態だ。この穴がきちんと埋められない限り、円安はとめどなく進む」と指摘。その「穴」の正体は、本来あるべき政策金利からの乖離だという。
世界の中央銀行は適正な政策金利を計算する方程式として、テイラー・ルールを普遍的に使っている。これは、経済を加熱も冷却もしない中立実質金利をベースに、足元のインフレ率と目標インフレ率の差、景気の過熱度を示す需給ギャップを加味して「政策金利の理論値」を弾き出すものだ。
日本銀行は6月に政策金利を1.0%に引き上げたが、それでも主要な推計モデルを使ったテイラー・ルールの理論値よりも3%以上低い。つまり、日本の経済実態に対して金利が不自然に低すぎる状態に放置されている。表面的に日本の金利が上がっても、市場からは「日銀の対応は後手に回っている」とみなされ、資本が日本から流出している。
金融抑圧が続く限り、円安は「どこまでも進む」
政策目的で金利を低く据え置くことを「金融抑圧」と言う。塚口氏は「この金融抑圧が続く以上は、円安進行は基本的には『どこまでも進む』と見る必要がある」と警告する。
そうした中、日本政府は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内資産に投資するよう後押しする方針を示した。この方針は事実上のマーケットへの口先介入という観測もあるが、効果について塚口氏は疑問を呈している。



