英補選で右派新党が保守票を分裂、マスク氏支援で台頭
英国の強硬右派新党「リストア・ブリテン」が、さらに強硬な反移民政策と米実業家イーロン・マスク氏の支援を背景に、ナイジェル・ファラージ党首(62)率いる強硬右派政党「リフォームUK」の台頭を脅かしている。
実業家で元サッカークラブ会長のルパート・ロウ党首(68)率いるリストア・ブリテンは、18日に控えた中部マンチェスター郊外のメイカーフィールド選挙区での下院補選で、リフォームUKから票を奪い、中道左派の与党・労働党の勝利をアシストすると予測されている。
ロウ氏は、移民政策をめぐってファラージ氏と対立しリフォームUKを除籍され、今年2月に英国政治の右派(保守派)における「もう一つの選択肢」としてリストア・ブリテンを立ち上げた。リストア・ブリテン所属の国会議員は現在、ロウ氏一人のみとなっている。
英国で反移民デモが頻発し、時に一部の参加者が暴徒化する中、ロウ氏のX(旧ツイッター)投稿をマスク氏が拡散しているおかげで、リストア・ブリテンの知名度は急上昇している。
メイカーフィールド選挙区での下院補選を前に、ロウ氏は通信アプリ「ワッツアップ」を通じてAFPの取材に応じ、「われわれは、(政府に)不満を抱いている有権者を投票所に呼び戻している」と語った。
不法移民や問題のある外国人の大規模な強制送還
下院補選は、キア・スターマー首相を引きずり下ろすために国政への復帰を目指す労働党候補でマンチェスター市長のアンディ・バーナム氏と、リフォームUK候補で配管工のロバート・ケニヨン氏による、事実上の一騎打ちとなっている。
調査会社は、リストア・ブリテン候補で地元実業家のレベッカ・シェパード氏が、約5~8%の票を獲得して3位につけると予測している。この得票率は、勝利が予想されるバーナム氏とケニヨン氏との差よりも大きくなる可能性がある。ケニヨン氏は今年2月、別の下院補選で反既得権を掲げる左派政党「緑の党」の候補に敗れている。
政治学者のジョン・カーティス氏はAFPに対し、「リストア・ブリテンの参戦が、ケニヨン氏がアンディ・バーナム氏を撃破する上で障壁となって立ちはだかる可能性がある」と述べた。
極右に関する著書のあるダニエル・トリリング氏は、「リフォームUKが(2月の下院補選に続いて)再び敗北すれば、政治的な勢いを失うリスクがある」と指摘。「党員や支持者は不満を募らせやすくなり、すでに現れているが、(党内の)分裂がさらに進むだろう」と語った。
リストア・ブリテンの看板政策は「大規模な強制送還」だ。不法移民だけでなく合法移民でも外国人犯罪者、英語を話せない外国人、生活保護を受給する外国人も追放する。
同党はさらに、イスラム教徒の女性が全身を覆う衣装「ブルカ」などの公共の場所での着用禁止や、死刑制度復活の是非を問う国民投票の実施も支持している。
トリリング氏は、「リストア・ブリテンは、英国における移民、人種、アイデンティティーの問題に対して、露骨にエスノ・ナショナリズム(人種などに基づいたナショナリズム)の立場を取ることで、リフォームUKよりもさらに右寄りのポジションを確立した」と分析。
欧州連合(EU)懐疑派のファラージ氏が「それとなくほのめかしながら」英国の政治的議論を右傾化させてきたのに対し、ロウ氏は「はるかに露骨だ」と付け加えた。
英領北アイルランドでスーダン出身の難民の男が市民1人を刃物で何度も刺して重傷を負わせた凄惨な事件への怒りが広がる中、ロウ氏はXに襲撃動画のスクリーンショットを投稿し、「何百万人も退去させなければならない」とのコメントを添えた。
「過激」
この投稿は、欧州の選挙で極右政治家を頻繁に支持しているマスク氏によってリポストされた。マスク氏は2億4000万人のフォロワーに対し、「英国を救うことができるのはリストア・ブリテンだけだ」とも呼び掛けている。
ロウ氏はAFPの取材に対し、「(ギリシャ神話に登場する何十年も掃除されていなかった)アウゲイアスの家畜小屋の掃除に成功するためには、イーロン・マスク氏を含む、良識があり、危機感を持つ人々のあらゆる支持が不可欠だ」と語った。
反人種差別団体「ホープ・ノット・ヘイト」は、ロウ氏を「英国で最も過激な下院議員」と呼んでいる。
英朝刊紙タイムズは4月、著名なネオ・ファシズム団体の指導者が2人がリストア・ブリテンへの支持を表明したと報じた。
ロウ氏は今月、Xに「本当に過激な立場とは、路上で他人を斬首しようとするような、未開の第三世界の動物たちを進んで引き込むことだ」と投稿した。
ファラージ氏は、トミー・ロビンソンの通称で知られるスティーブン・ヤクスリーレノン氏のような極右活動家とは距離を置いている。これについてマスク氏はヤクスリーレノン氏への支持を表明する一方、ファラージ氏を「弱腰」と呼んで批判した。
ファラージ氏は、2029年に予想される次期総選挙に向けてリフォームUKの裾野を広げるべく、中道右派の野党・保守党からの離党議員を複数受け入れている。
だが、この戦術は一部の有権者をリストア・ブリテンに奪われるリスクをはらんでいる。
メイカーフィールド選挙区の、主に白人の労働者階級が住むヒンドリー地区では、これまでリフォームUKを支持してきたダレンさん(54)が、今後の選挙では投票先を変えるつもりだと語り、ロウ氏が「中小企業を支援する」姿勢を称賛した。
また、先月の地方選でリフォームUKに投票したという67歳の男性はリストア・ブリテンのチラシを配りながらAFPに対し、「既得権益層(エスタブリッシュメント)は、国民の怒りを過小評価している」と語った。



