石破茂首相は2024年10月1日の就任に際し、岸田文雄内閣で官房長官を務めた林芳正氏を再任した。総裁選で争ったライバルの起用は前例がなく、政権の継続性を重視する姿勢が際立つ一方、安倍路線からの転換を掲げる石破政権の矛盾も浮き彫りになっている。
前例のないライバル起用
内閣が交代しても官房長官が続投したケースは過去に2例ある。小渕恵三首相の急逝を受け森喜朗氏が後継となった際の青木幹雄氏と、森首相退陣後の小泉純一郎内閣で福田康夫氏が務めた例だ。しかし、直近の総裁選で戦った相手を官房長官に据えたのは石破政権が初めてとなる。
林氏は再任の打診を受けた際の心境を「ちょっとびっくりした。もう片付け始めていたんです。打診が来た時は。途中で片付けをやめました」と振り返る。
継続性重視と見返りの側面
石破氏は再任の理由について「岸田内閣の継続性を考えた。自分の政権がどこで終わるかわからないから、林さんだったら間違いないというのがあった」と説明する。総裁選の決選投票で岸田氏の支持を受けた石破氏にとって、旧岸田派幹部である林氏の起用は、その見返りの側面もあったとみられる。
石破氏は政調会長時代、政調会長代理だった林氏とたびたび政策を議論。自身の後任の防衛相に林氏が就く際には、議員宿舎の会議室で2時間近く防衛政策の引き継ぎを行ったこともあるという。
旧岸田派の分裂と政権の課題
2024年の総裁選には石破氏とともに林氏も立候補した。だが、首相と官房長官の関係にあった岸田氏は林氏の支持を鮮明にしなかった。旧岸田派からは上川陽子氏も出馬し、無派閥の小泉進次郎氏の支持に走る議員もいて、旧派内はまとまりを欠いた。
安倍政権からの政治姿勢の転換を図ろうとした石破氏にとって、岸田氏との関係が政権運営にどう影響するのかが焦点となる。



