2024年10月の大統領選直前、トランプ氏の応援に駆けつけたイーロン・マスク氏。当時はまだMAGA(アメリカを再び偉大にする)とテック富豪は奇妙な同盟を結んでいたが、今やその関係は大きく揺らいでいる。米ニューヨーク大学ロースクール教授スティーブン・ホームズ氏は、この二つの勢力の分裂がトランプ陣営の岩盤支持層に亀裂を生み出していると指摘する。
MAGAとテック右翼:奇妙な政治的結婚の終焉
トランプ大統領のMAGAムーブメントと「テック右翼」の合体ほど奇妙な政治的結婚もない。台頭著しいテック右翼は、トランプの大統領復帰を支えたシリコンバレーの富豪とベンチャーキャピタリストの集団で、AI(人工知能)によって大量の失業者を生み出す未来に向けて突っ走っている。そうしたテックエリートが、古き良き時代を取り戻そうとする大衆のムーブメントとトランプの下で結びついているのだ。
この二つの勢力は単に欲しているものが違うだけでなく、そもそも違う世界に住んでいる。過去を美化するMAGA派の庶民に対して、現在をぶっ壊して時代遅れのものにしようと血道を上げているのがシリコンバレーのエリートだ。AIの急速な発展が、両陣営の溝をさらに深めている。
MAGAはAI帝国でアンダークラスと化す
「普通の人々」という像も、両陣営の見方は大きく割れている。MAGA支持者はAIによる雇用喪失を恐れ、伝統的な産業の保護を求める。一方、テック右翼はAI革新を推進し、労働市場の破壊を当然視する。この根本的な価値観の違いが、トランプ政権内部で政策の不一致を引き起こしている。
電気代高騰が象徴するAIのハイパーな搾取構造も、両陣営の対立を激化させている。AIデータセンターの電力消費が急増し、一般家庭の電気代が上昇。MAGA支持者はこれを「エリートによる搾取」と批判するが、テック右翼は経済成長の代償として受け入れるべきだとする。
テック右翼の台頭とMAGAの反発
シリコンバレーの富豪たちは、トランプ政権下でAI規制緩和や税制優遇を獲得しようと働きかけている。しかし、MAGA支持者の間では「自分たちの雇用を奪う技術を推進するエリート」への反感が強まっている。この緊張は、2026年の中間選挙に向けてトランプ陣営の結束を脅かす可能性がある。
ホームズ教授は「テック右翼とMAGAは、もともと相容れない要素を抱えていた。AIの急速な発展がその矛盾を表面化させた」と分析する。トランプ大統領は両陣営のバランスを取ろうと苦心しているが、亀裂は深まる一方だ。
今後、AI政策を巡る議論がさらに激化すれば、トランプの支持基盤が分裂し、政権運営に重大な影響を及ぼす可能性がある。アメリカのAI戦略は、単なる技術政策ではなく、政治的な分断を象徴する問題へと変貌しつつある。



