中東情勢をめぐる新たな多国間協議が21日、スイスのジュネーブで行われている。米国のJD・バンス副大統領とイランの交渉団が現地に到着し、核問題やレバノン停戦の進展を目指す。一方、イランはホルムズ海峡の再封鎖を表明しており、緊張が一層高まっている。
バンス副大統領、核問題とレバノン停戦に期待
出発前、バンス氏は記者団に対し、「核問題とレバノン停戦の進展に期待している。この2点が今回の最重要課題になる」と語った。協議は当初19日に予定されていたが、イスラエル兵4人の死亡を受け、イスラエル軍がレバノンへ大規模な報復空爆を実施したため、延期されていた。
米国は19日、イランとの間で交わした事前の合意条件に基づき、レバノンでの新たな停戦を発表した。しかし翌20日には、イスラエル軍と親イラン武装組織ヒズボラが再び衝突。双方が停戦違反を主張し、非難し合っている。
イラン、ホルムズ海峡の再封鎖を発表
イランのハタム・アル・アンビヤ中央司令部は、米国による「協定違反」と「イスラエルによるレバノン南部での度重なる停戦違反」を挙げ、「ホルムズ海峡を再び封鎖し、船舶の通航を禁止する」と発表した。石油や天然ガス輸送の要衝であるホルムズ海峡は、これまでの衝突で長期間封鎖され、世界のエネルギー市場に衝撃を与えた。その後、ドナルド・トランプ米大統領とイランのマセウド・ペゼシュキアン大統領が署名した予備合意に基づき、イラン側は封鎖解除に同意し、海上交通は回復し始めたばかりだった。
イランの発表を受け、米中央軍(CENTCOM)は「国際水路の安全航行は維持されている」とし、米軍が「警戒を続けている」との声明を出した。一方、トランプ氏はSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、交渉が不調に終わった場合、米国独自の通航料を課す可能性があると警告し、「米国のために、米国によって課される場合を除き、通航料が設定されることはない」と牽制した。
スイスでの協議の行方
イラン国営メディアとスイス外務省によると、イラン代表団は20日夜にスイスに到着した。代表団にはモハンマド・バゲル・ガリバフ議会議長やアッバス・アラグチ外相が含まれている。イラン外務省のイスマイル・バカエイ報道官は国営イラン通信(IRNA)に対し、代表団は「米国側の義務履行を強く求める。さもなければ、これまでの合意全体が危機に瀕することになる」と語り、強い姿勢を示した。
21日朝にスイスに到着したバンス氏は、滞在期間が「1、2日程度」になるとの見通しを示している。米国側はすでにジャレッド・クシュナー氏やスティーブ・ウィトコフ氏らの交渉担当者が現地入りして実務協議を進めており、バンス氏は前日の米フォックスニュースのインタビューで「順調に進んでいる」と述べていた。また、今回の仲介を支援しているパキスタン政府は21日、シャーバズ・シャリフ首相とアシム・ムニール陸軍参謀長が、米国やイラン、カタールなどの仲介国が参加する高官級協議に出席すると発表した。
レバノン停戦は形骸化、戦闘続く
レバノン南部では20日も激しい戦闘が続き、イスラエルとヒズボラの間では、激しい非難の応酬が繰り返された。イスラエル軍は、戦闘で兵士1人が死亡したと発表。米イラン間の合意形成以降、イスラエル側の死者は5人目となった。軍高官はその後、政治指導部から停戦命令を受けたと明かし、「積極的な攻撃は行わず、治安地帯内で防衛的作戦に徹している」と説明した。
これに対し、ヒズボラ側は、イスラエルが「停戦を隠れ蓑にして」ナバティエを見下ろす戦略的要衝、アリ・タヘル丘陵への侵入を試みたと主張し、迎撃したと発表した。レバノンの国営メディアによると、イスラエル軍による空爆は約20か所に及び、30人以上の死亡が確認された。レバノン保健省は、一連の戦闘による国内の死者が4000人を超えたと発表している。
ヒズボラのハッサン・ファドラ議員は「敵が攻撃してくる以上、立ち向かうのは当然の権利だ」と主張。一方、イスラエルのイエヒエル・ライター駐米大使は「ヒズボラ側が先に停戦を破った。わが国はテロ攻撃に対して自衛しているだけだ」と反論し、泥沼化の様相を呈している。



