北海道斜里町の知床半島を流れるイワウベツ川で、サケ科のイワナの仲間であるオショロコマが、改良工事中のダム上流部で生息を確認された。この個体は昨年6月に下流で捕獲され、腹部に長さ1センチ、幅1ミリの電子タグを埋め込まれた後、放流されたもので、ダムを越えて遡上したとみられる。林野庁などが進める河川工作物の改良工事の効果が表れた形だ。
ダム改良工事の経緯と現状
知床の川には現在、100か所以上のダムなどの河川工作物が存在する。世界自然遺産の審査機関である国際自然保護連合(IUCN)は、2005年の知床登録後もこれらの撤去や改修を求めてきた。これを受け、林野庁と北海道はサケ科の魚が再び遡上できる川を目指し、河川工作物の改良工事を進めている。
イワウベツ川は、自然保護のために住民らが土地を買い取るナショナル・トラスト運動「しれとこ100平方メートル運動」の象徴的な地とされる。林野庁はダム中央部に切り込み(スリット)を入れ、魚が越えやすくする工事に着手。このうち「7号治山ダム」は2023年度に完了した。さらに上流の「3号治山ダム」は、落差が約3メートルだったが、2024年度から毎年1メートルずつ低くする工事が進められ、現在の高さは1メートルで、今秋にはゼロになる予定だ。
共同調査でオショロコマを捕獲
町立知床博物館、知床財団、東京農業大学海洋生物学研究室(網走市)は6月10~11日、イワウベツ川で共同調査を実施した。電気ショックで魚を捕獲したところ、3号ダムの上流部で体長20センチ超のオショロコマ2匹が見つかった。うち1匹は電子タグが付いた個体だった。
知床博物館によると、3号ダム上流部では約3年前からオショロコマは確認されていなかった。理由は不明だが、元々いた個体が絶滅した可能性があるという。下流で放したタグ付き個体が上流部で見つかったことは、オショロコマが改良後のダムを越えて遡上した証拠といえる。
関係者の期待と今後の展望
知床博物館の臼井平学芸員は「100平方メートル運動やイワウベツ川での保全活動に関わる人々の努力が実を結んだ結果だ。秋に3号ダムの落差がゼロになれば、さらなる生態系の回復に期待が持てる」と語った。
この成果は、ダム改良工事が生態系回復に寄与する具体的な証拠として注目される。今後、3号ダムの完全撤去により、さらに多くの魚類の遡上が期待され、知床の自然環境の改善につながるとみられる。



