「買ってはいけない」とされる毎月分配型投資信託(毎月分配型投信)を、高齢者が知りながら購入し続ける理由について、ファイナンシャルプランナーの松田聡子氏(群馬FP事務所代表)が解説する。コスト面では不利であり、タコ足分配のリスクがあるにもかかわらず、シニア層には独自の合理的な判断があるという。
毎月分配型投信のコスト面でのデメリット
毎月分配型投信の信託報酬は年率1~2%程度が一般的だ。一方、ネット証券の定期売却サービスを利用すれば、信託報酬が年率1%未満の低コストインデックスファンドを自動で毎月一定額売却できる。さらに、NISA口座なら売却益も非課税となる。純粋な運用効率だけを見れば、定期売却サービスのほうが合理的である。
タコ足分配のリスクを承知で選ぶシニアの事情
毎月分配型投信が爆発的に普及したのは2010年代で、主な購入者は高齢者だった。松田氏の相談者には、投資元本約5000万円で毎月40万~50万円の分配金を受け取っていた高齢女性がいた。自宅には寝たきりのご主人がおり、介護保険の支給限度額を超えた民間介護サービスを自費で利用していた。彼女は分配金を介護費用に充てていたが、運用成績の低下で分配金が減り、タコ足分配も増えた。
松田氏は毎月分配型投信をインデックスファンドなどに買い替え、自動売却を利用するようアドバイスしたが、頭では理解できても、一度毎月分配型の「うま味」を知ってしまうと乗り換えは難しかったという。
高齢者が毎月分配型を選ぶ3つの理由
第1の理由は、時間軸の違いだ。残りの人生を見据えれば、20年後の資産最大化よりも今月のキャッシュフローのほうが切実である。「増やす」フェーズを終えた人にとって、運用効率はそれほど重要ではない。
第2は、ITリテラシーの壁である。「インデックスファンドを保有し、定期売却サービスを利用する」というのは、ITリテラシーが衰えゆくシニア層にとって難題だ。サービス利用には複雑な取り崩し条件(定額か定率かなど)を自分で計算・設定する必要がある。購入するだけで自動的に分配金が口座に振り込まれる毎月分配型投信の便利さは、インデックスファンドにはない魅力だ。
第3は、インカムゲイン(配当・利息)への根強い信頼感である。「元本には手をつけず、果実だけを受け取る」という感覚は、実際はそうでなくても、特に資産を守ることを優先するシニア層に深く根付いている。
毎月分配型はシニアにとって合理的なサービス
毎月分配型投信はシニア層にとって、「高い信託報酬を払って、元本の取り崩しを任せられるサービス」として機能しているともいえる。資産形成層にとっては非効率な仕組みが、資産を使い切るフェーズの高齢者にとっては一定の合理性を持つ。松田氏は、NISAによる毎月分配型投信の排除がもたらした副作用についても指摘しており、次ページで解説する。



