日本最大の私鉄はどこか。そう聞かれて多くの人が阪急や東急を思い浮かべるかもしれない。しかし実際に日本最大規模の路線を持つ私鉄は近畿日本鉄道、通称「近鉄」である。大阪・京都・奈良を結び、さらに伊勢志摩へ。関西から名古屋を結ぶ私鉄の大動脈だ。名阪特急「ひのとり」、観光特急「しまかぜ」、吉野へ向かう「青の交響曲(シンフォニー)」、奈良の都をテーマにした「あをによし」など多彩な特急列車を擁する。
なぜ近鉄は特別な存在であり続けたのか
元近鉄広報マン・福原稔浩氏は著書『近鉄学 -元名物広報マンが解き明かす、日本最大私鉄の強さの秘密-』で、その舞台裏を解説している。路線の成り立ち、車両の進化、観光開発、多角経営――近鉄の歴史は決して順風満帆ではなかった。約30社に及ぶ鉄道会社の統合や路線ごとに異なる軌間の問題など、幾度も課題に直面しながら、その時々の決断を積み重ねてきた。
新幹線に勝てないなら「2時間を快適に」の逆転発想
新幹線との競合が避けられない名阪間で、近鉄は「時間はかかっても安い」という強みを活かした。しかしそれだけではない。「2時間を快適に」という逆転発想で、座席の快適性や車内サービスを徹底的に追求。名阪特急「ひのとり」はプレミアムシートを備え、ビジネス客からも支持を得ている。
観光と地域に根差す経営
近鉄は伊勢志摩や吉野など沿線の観光資源を積極的に開発。観光特急「しまかぜ」や「青の交響曲」は、単なる移動手段ではなく旅そのものを楽しむ体験型列車として人気を博している。また、地域密着型の経営により、地元住民の足としても欠かせない存在だ。
多角経営と統合の歴史
近鉄は鉄道事業だけでなく、百貨店やホテル、不動産などの多角経営で収益を安定させてきた。約30社の統合により路線網を拡大し、日本最大の私鉄へと成長。福原氏は「統合ごとに直面した軌間の違いや経営統合の難しさを乗り越え、一つ一つの決断が今の近鉄を形作った」と語る。
「地域社会の一員」としての使命
近鉄は単なる鉄道会社ではなく、地域社会の一員としての役割を重視。災害時の復旧や沿線イベントの支援など、地域と共に歩む姿勢が支持されている。福原氏は「近鉄の強さは、地域に根差し、利用者と共に成長してきた歴史にある」と指摘する。



