副業をしている人なら、仕事で使うパソコンや事務用品など、経費にできるものはある程度知っているだろう。ところが、「これは経費にはならない」と思っている支出の中にも、条件次第で経費として認められるものがある。ビジネススクールや財務戦略セミナーで講師を務める桜井潤一さんに、意外と知られていない「副業の経費」を5つ解説してもらった。
副業で知っておきたい「経費」の基本
副業をしている方からは、「どこまでが経費として認められるの?」といった相談をよく受ける。意外な経費をご紹介する前に、まずは「なぜ経費を正しく把握する必要があるのか」、基本をおさらいしておこう。
副業で税金がかかるのは、売上(収入)そのものではなく「所得」です。所得は「収入-経費」で計算されるため、経費を正しく理解し、適切に管理することが、税負担を抑え、利益を残すための第一歩になります。
私は24年間、銀行員として1000社を超える企業の融資審査や財務支援に携わってきました。数多くの決算書を見てきた中で感じるのは、利益を残し続ける経営者ほど、「必要な経費を正しく使う」という意識が徹底していることです。副業でも同じです。経費を正しく理解し、お金の流れを把握することが、将来的な利益や資金の残し方に大きな差を生みます。
意外と経費にできる支出とは
「家で仕事をしているだけなのに、家賃まで経費になるのですか?」これは副業の経費相談で多い質問の一つです。ライターや動画編集者、Web制作、SNS運用など、自宅で仕事をする副業であれば、仕事部屋や作業スペースとして利用している割合に応じて、家賃の一部を経費にできる場合があります。これを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。
持ち家の場合は、住宅ローンそのものではなく、建物の減価償却費や固定資産税、ローンの利息、火災保険料などの一部が対象になるケースがあります。割合の決め方に厳密なルールはありませんが、部屋の広さや使っている時間をもとに算出するのが一般的です。リビングで作業しているなど生活との境目が曖昧な場合は、割合を低めに見積もっておくと安心です。
ただし、自宅で仕事をしているからといって、自由に割合を決めて経費にできるわけではありません。仕事で使っている割合を、部屋の広さや使用時間などから合理的に説明できることが前提です。
セミナー・オンライン講座代も対象に
副業に必要な知識を身につけるためのセミナーやオンライン講座、専門書なども、仕事内容との関連性があれば経費になる可能性があります。たとえば、Webライターが文章術やSEOを学ぶ講座を受講したり、動画編集者が編集技術を学ぶセミナーに参加したりするケースです。
セミナーや講座の受講料だけでなく、副業に必要な専門書の購入費や、セミナー会場までの交通費なども、条件を満たせば経費の対象になる場合があります。
一方で、「将来、副業に役立ちそう」というだけでは経費にできるとは限りません。現在行っている副業の業務に必要な知識やスキルを得るための支出であることがポイントです。趣味や一般的な自己啓発を目的とした講座など、副業との関連性が薄いものは経費にするのが難しくなります。
経費として計上するなら、「その支出が副業の収入を得るために必要だった」と合理的に説明できるようにしておくことが大切です。領収書だけでなく、受講した講座の内容や購入した専門書、セミナーの開催概要なども残しておけば、なぜ副業に必要だったのかを説明する際の根拠になります。
「経費になる・ならない」の判断基準
経費の判断基準となるのは、「その支出が事業に必要だったかどうか」と話す桜井さん。「経費になるか」だけで判断するのではなく、「事業に必要な支出だったと合理的に説明できるか」、これを意識しておくことが、経費を正しく計上するうえで重要という。後編では、より身近な「知らないと損する副業の経費」について解説する。



