茨城県随一のブドウ産地である常陸太田市では、観光ブドウ園や直売が盛んだ。阿武隈山地南端の水はけのよい丘陵地はブドウ栽培に適しており、筑波山麓ではワイン生産も活発化している。
常陸太田のブドウ栽培の歴史
ブドウの栽培は約1万1000年前に始まったとされ、古くから人々にとって身近な果物の一つで、大半はワインとして飲まれてきた。旧約聖書には洪水の後にノアがワインで酔う話があり、ジョン・スタインベックの小説を映画化した「怒りの葡萄」は、神の怒りによって踏みつぶされる人間をワイン製造の際に破砕されるブドウに例えた。
ブドウは中東や地中海では紀元前からよく知られ、シルクロードを経て奈良時代ごろに日本へ伝わった。栽培が始まったのは現在でも生産高日本一の山梨県で、今も残る「甲州」という種類が、明治時代初期に登場する小粒のデラウェアに至るまで、1100年以上にわたって育てられてきた。松尾芭蕉が詠んだ「勝沼や馬子も葡萄を食ひながら」に登場するブドウも「甲州」だったのだろう。
観光農園と直売の広がり
茨城県では、随一の産地である常陸太田市でみられるように、観光ブドウ園や直売が盛んだ。皮ごと食べられるデラウェア、ピオーネ、シャインマスカットなどが人気を集めている。
昭和34年にブドウの試作が始まり、36年に「巨峰」の結実に成功、38年には約20人の生産者が「常陸太田ぶどう部会」を結成した。阿武隈山地南端の水はけのよい丘陵地は、カルシウムやミネラルを多く含む土壌にも恵まれ、ブドウの栽培に適している。モータリゼーション社会が到来し、余暇を楽しむ人々の需要が高まったことで観光農園が広がるようになり、今に至っている。
筑波山麓でのワイン生産
もう一つ、茨城のブドウの話題で欠かせないのがワインだ。明治時代に開設された日本初の本格的なワイン醸造所「牛久シャトー」(牛久市)は国の重要文化財に指定され、日本のワイン産業の原点と位置づけられている。
また、15年ほど前からは小規模・個人経営の「クラフトワイナリー」がブームとなり、茨城県のワイナリー数は全国で6番目に多い。つくば市は平成29年に「つくばワイン・フルーツ酒特区」の認定を受け、果実酒製造免許を取得するための基準が緩和された。この結果、土壌も気候もワイン向きの筑波山麓でワイン生産が盛んになった。この地の花崗岩土壌はワインで有名なフランスのローヌ地方に似ているとも指摘される。茨城ワインの伸びしろは無限大だ。



