日銀31年ぶり利上げも円安止まらず、1ドル160円は通過点か?今後の展望
日銀31年ぶり利上げも円安続く、1ドル160円は通過点か

米・欧・日の中央銀行が軒並み利上げ方向にあるものの、タカ派度合いには差が見られる。日銀は6月16日、政策金利を1.00%へ0.25%ポイント引き上げることを決定。これは昨年12月以来半年ぶり、政策金利としては31年ぶりの水準となる。市場では約100%織り込み済みだったため、金利・為替市場に大きな動きはなかった。

ドットチャートの限界と透明性の逆効果

多くの市場参加者が認識する通り、ドットチャートの見通しが実際に実現することは稀であり、議長会見での発言も可変的だ。政策の予測可能性を高めるためのツールが、逆に予想との乖離を生み、ノイズとなっている。ドットチャートはリーマンショック後のバーナンキ体制下で、FRBが「当面金利を上げない」意向を浸透させる強力なフォワードガイダンスとして導入された。しかし、金利正常化後の平時でも惰性で使い続ければ弊害が大きい。近い将来の廃止は妥当だろう。

また、年8回の記者会見も、パウエル体制下の2019年に年4回から倍増されたが、政策の予測可能性向上という目的は十分に達成されていない。「情報を多く与えれば市場が効率化される」という前提は、情報が確実な場合に限られる。金融政策運営が「data dependent」である以上、透明性が逆効果になることもある。

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日銀の上下双方向の意思決定は円安を動かせず

日銀の声明文では、中東情勢の影響で「経済が大きく下振れるリスクは一頃よりも低下している」と明記され、利上げの一因となった。また、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」として、利上げ局面の持続性が強調された。一方、長期国債の購入計画については、年度内の既存計画維持後、2027年4月以降は買い入れ額の減額が停止される方針が確認された。

「円安抑止には大幅利上げが必要」と言われる中、金利の引き上げと引き下げの話が混在する意思決定は影響力を持ちにくい。実際、利上げ決定後のドル/円相場は1ドル160円台に定着している。

利上げ打ち止めは近いのか?

今回の声明で注目されたのは、「現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると」という文言が削除された点だ。内田日銀副総裁は、実質金利との距離感を示すよりも「金融緩和の度合い全体を評価し、説明する方が適切」と述べ、コミュニケーション手法の見直しに過ぎないとした。しかし、打ち止め感は今後浮上するだろう。

今年3月下旬に公表された日銀の論文では、自然利子率は「▲0.9%程度~0.5%程度」と推計されている。2%のインフレ率を前提とすれば、中立的な政策金利は「1.1%程度~2.5%程度」となり、利上げ後の1.00%はその下限に近い。もっとも、利上げ路線の停止を主張できる環境ではないため、「引き続き政策金利を引き上げ」と釘を刺されているが、「現在の実質金利がきわめて低い水準」と言えなくなったのは大きな変化だ。順当なら、あと2~3回の利上げを経て打ち止め感を示唆する情報発信が行われる可能性がある。

政府がCPIを抑え込む中、真の実質金利を測る

政府の物価抑制策により、実際の実質金利は公表値よりも低く見積もられる可能性がある。今後の金融政策運営では、この点も考慮する必要があるだろう。

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