日銀、31年ぶりの1%利上げ 円売りの理由が変わった
日本銀行が31年ぶりとなる利上げを実施し、政策金利を1%に引き上げた。これにより、円相場は1ドル160円台と歴史的な円安水準にある。市場では「1ドル160円はもはや通過点に過ぎない」との見方も広がり、さらなる円安を阻止するための日銀の追加利上げ幅が焦点となっている。
欧米とのタカ派度合いの差
米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)も利上げ方向にあるが、タカ派度合いには差がある。日銀の利上げは依然として緩やかであり、内外金利差の拡大が円売りを加速させる懸念が強い。
中立金利を超える利上げも視野
問題は、中立金利と思しき水準まで利上げされたとしても、その時の円相場がどのような状況にあるかだ。中立金利の領域に踏み込んでもなお円安が修正されていないのであれば、中立金利を超えた水準まで利上げする展開もあり得る。
1999年2月に無担保コール翌日物金利が誘導目標に設定されて以降、日本の金融政策運営が利上げ主導で実質金利の水準を着々と押し上げ、明確な引き締め局面に突入したことはない。基本的に実質政策金利が大きなプラスだったのはインフレ率がマイナスだった時代である。
「真の実質政策金利」はもっと低い
現状、実質政策金利は6月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)を前提とすれば▲0.40%(1.00%−1.40%)とプラス圏復帰が目前に見える。しかし、高校授業料無償化やガソリン補助金などの影響でCPIが人為的に抑えられているため、「真の実質政策金利」はより低い水準にあるはずだ。
今年4月の特殊要因を除いたコアCPIは前年比2.8%まで押し上げられるため、「真の実質政策金利」は▲1.80%(1.00%−2.80%)まで下がっているという考え方がある。円安の憂いが続く限り、実質政策金利の低さが複眼的に問題視され、利上げ実施の理由に使われる状況は当面続くと予想される。
通貨防衛のための利上げ
通貨防衛を企図する利上げの必要性は理解されやすい部分もあるため、2027年以降、中立金利超えの利上げが行われるとすれば、やはり為替相場次第となる。
利上げの終着点は1.50%〜1.75%か
今回の利上げ局面の終着点となる金利「ターミナルレート」をどう見るべきか。今回の公表文には「消費者物価の基調的な上昇率が2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクがある」との表記が見られた。基本的にはビハインド・ザ・カーブへの懸念を抱えつつ、利上げ路線は当分続くだろう。
ターミナルレートについては現状1.50~2.00%までさまざまな意見が見られるが、年内にECBに加えてFRBも利上げを再開し、少なくとも2027年いっぱいは利上げ路線(3回程度の利上げ)が続けられる可能性がある。
円安抑止の観点からは26年中に最低1回、27年中に最低2回の利上げをしなくては、内外金利差拡大の観点から円売りが加速する懸念が強い。つまり、27年にかけてあと0.75%ポイント(1.75%まで)の利上げを見込むことになる。
円売りのテーマはシフトした
従来の円売りは、日銀の緩和政策と海外の利上げによる金利差拡大が主因だった。しかし、日銀が利上げを開始したことで、円売りの理由が変化している。市場参加者は、日銀の利上げペースやターミナルレートに注目しており、円安是正にはより積極的な利上げが必要との見方が強まっている。



