スーツ市場の縮小と業界の構造転換
帝国データバンクが6月9日に発表した調査によると、主要紳士服7社の2025年度(2026年3月期)のスーツ事業売上高合計は3386億円(前年度比5.2%減)となり、2年連続で減少した。リモートワークの定着や働き方の多様化により、従来の既成スーツ市場は縮小傾向が続いている。連結売上高ではAOKIホールディングスが初めて青山商事を抜いて業界首位となったが、スーツ事業単体では依然として青山商事がトップを維持している。
店舗数減少と収益悪化
7社の店舗数は2025年度末時点で2284店舗となり、過去10年で初めて2300店を下回った。大規模な店舗整理の影響が残る一方、オーダースーツ専門の小型店舗や郊外ショッピングセンターへの移転が進んでいる。利益面では円安による輸入生地の仕入れ価格上昇や人件費・光熱費の高騰が響き、営業利益合計は130億円と前年度から26%減少した。
オーダースーツの台頭と新たな需要
注目すべきは、オーダー専業のグローバルスタイルが2025年に展開した「ガチスーツ」をテーマとしたショートドラマのヒットである。SNSで爆発的に広がり、「特別な場面では質の高いスーツを着たい」という潜在ニーズを掘り起こした。手頃な価格のパターンオーダーの普及により、オーダースーツのハードルが下がり、幅広い世代で認知度が高まっている。
各社の戦略と今後の見通し
青山商事はカスタムオーダー専門店やハイエンドモデルを本格展開し、客単価向上を図る。AOKIホールディングスはカジュアル衣料を伸ばし、はるやまホールディングスは疲労回復ウェアやウェルネスウェア専門店を展開するなど、機能性オフィスカジュアルや女性向け商品を拡充している。2026年度もスーツ需要の総量縮小や円安によるコスト上昇が避けられない中、各社はオーダースーツを軸に需要を取り込み、カジュアル・レディース領域の拡大、店舗の小型化によるローコスト運営を進め、販売量から経営の質を重視する傾向を強める見込みである。



