ニトリホールディングス代表取締役会長兼CEOの似鳥昭雄氏は、かつて長時間労働を良しとする「がんばれ主義」で行き当たりばったりの人海戦術を取っていた。しかし、一冊の本との出会いから、著者である渥美俊一氏に教えを請い「30年計画」を策定。2003年に「100店舗、1000億円」の目標を実現したという。その成功の背景には、発達障害という自身の特性を強みに変えた経験がある。
最低11店舗なければチェーンストアじゃない
似鳥氏は札幌市内に3店舗を展開し、それなりに軌道に乗りつつあった。だが、経営は自己流で、ヒト、モノ、カネすべてにおいて場当たり的な判断が続いていた。そんなある日、旭川のメーカーへ仕入れ交渉に出かけた際、応接室で偶然手に取った一冊の本に釘付けになる。そこには、経営の難題を科学的かつ論理的に解き明かす内容が書かれていた。
特に衝撃を受けたのは、チェーンストアの店舗数についての考え方だ。当時北海道の小売業界では「店数が5店舗以上になると社長の目が届かず倒産する」と言われていた。しかし、アメリカ視察で100店舗以上の大規模チェーンを見ていた似鳥氏は、その本にこう書かれているのを読んだ。「最低11店舗なければチェーンストアじゃない」「100、200、1000店という数を建てなければ、お客様が本当に求める品質や機能、安さは実現できない」。似鳥氏は心の中で「やっぱりそうだったんだ!」と叫んだという。
「うさぎより亀が勝つ」との出会い
本の著者は渥美俊一氏。東京大学法学部卒業後、読売新聞記者を経て経営コンサルタントとなり、チェーンストア研究団体「ペガサスクラブ」を設立。ダイエーやイトーヨーカ堂、イオンなど多くの創業者に影響を与えた人物だ。「流通革命を起こし、日本に経済民主主義を植え付ける」という渥美氏の夢に、似鳥氏は心打たれた。
似鳥氏は「うさぎより亀が勝つ」という言葉に導かれ、粘り強く事業を拡大。渥美氏の教えを基に「30年計画」を立て、目標を毎日のように話すことで「本気」になり、実現へと突き進んだ。発達障害の特性を強みに変え、こだわりを持って挑戦し続けた結果、ニトリは国内有数の小売企業へと成長した。



