日本最大の私鉄である近畿日本鉄道(近鉄)は、なぜ阪急電鉄や東急電鉄よりも巨大な存在になり得たのか。その背景には、新幹線に勝てないなら「2時間を快適に」という逆転の発想があった。元近鉄広報マンの福原稔浩氏が、その強さの秘密を解き明かす。
新幹線に勝てないなら「2時間を快適に」
名古屋と大阪を結ぶ名阪間の所要時間は、新幹線に比べて約2倍の約2時間かかる。それでも近鉄は、「ならば、その2時間を快適にくつろげる時間に変えればよい」と発想を転換し、2020年3月にはさらなる居住性を追求した『ひのとり』を投入した。
本革張りのリクライニングシートを備えたプレミアムカーは、一般席より料金が高いにもかかわらず、まずプレミアムカーから満席になるという全国でも稀有な現象を生んだ。特別料金は高額と言っても新幹線普通車より安価な設定であり、快適性と価格のバランスが支持を集めたとみられる。福原氏は「たとえ時間がかかっても、しっかりとしたサービスを提供すればお客様は乗ってくれる。近鉄はそのことを学んだ」と指摘する。
幾多の試練を乗り越えた歴史
近鉄は、幾多の試練や転換点においても決してあきらめず、自らの強みを生かし、時には戦略を大胆に変えながら挑戦を続けてきた。近年はホールディングス体制への移行によって、260社を超えるグループ企業の横断連携と経営の柔軟性を高め、「次世代型グループ経営」への転換が進められている。
その一連の取り組みは、近鉄が単なる鉄道会社ではなく、地域を支え、地域を守っていく「地域社会の一員」としての責任と可能性を担っていることを、改めて浮かび上がらせている。
『近鉄学』にみる企業哲学
福原氏は著書『近鉄学 -元名物広報マンが解き明かす、日本最大私鉄の強さの秘密-』(ワニブックス【PLUS】新書)で、近鉄の企業哲学を歴史と思想の両面から解説している。同書では、数字や年表の裏側にある近鉄の挑戦と地域貢献の姿勢が描かれている。



