英国高速鉄道HS2、22兆円超のコスト膨張で計画縮小…日本の新幹線に憧れた末路
英国HS2、22兆円超のコスト膨張で計画縮小…新幹線憧れた末路

英国が2026年完成を目指した高速鉄道「HS2」は、当初予算の3倍となる22兆円超に膨張し、開業も2040年代まで先送りされた。敷設距離は日本のリニアよりも短く、事業費は2.5倍超に達する。日本の新幹線を手本にしたはずのHS2が、世界最速にこだわった結末を、海外メディアが報じている。何が巨大計画を狂わせたのか――。

怒りに震えた運輸大臣の告発

「もし私が怒っているように見えるとすれば、それは、実際のところ怒っているからだ」——2026年5月19日、英国議会下院で運輸相ハイディ・アレクサンダー氏は、HS2計画を厳しい口調で断罪した。最新の事業費見通しは、877億〜1027億ポンド(約18兆8000億〜22兆1000億円)に達し、当初予算の3倍に膨れ上がった。アレクサンダー氏は「途方もない誇大設計の愚行だ」と指摘し、「世界中のどこよりも高速な列車」を掲げてきた計画を糾弾。乗客が求めるのは信頼性とサービスであって、世界最速ではないと暗に批判した。

世界最速も、路線の6割も諦めた

HS2はロンドンから北西に延びる高速鉄道で、現在はロンドンとバーミンガム間の225キロ・4駅の計画。当初は530キロでマンチェスターやリーズへ分岐する予定だったが、スナク前首相が2023年10月に北部区間の中止を発表。総延長は当初の約58%に縮小した。さらに、最高時速は360キロから320キロに引き下げられ、欧州標準の速度に収まった。全線開業でロンドン―バーミンガム間は現行より30分短縮の49分になる見込みだが、計画は年々泥沼化している。

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建設費は「月探査計画」超え

HS2のコストは、月探査計画「アルテミス」をも上回る規模だ。英国政府はすでに220億ポンド以上を投じたが、完成にはさらに巨額の資金が必要。路線の6割を断念してもコストは当初の3倍に達し、国民の批判が高まっている。

「世界最速」が生む差はわずか3分

HS2は世界最速を目指したが、実際の時間短縮効果は限定的だ。ロンドン―バーミンガム間で360キロと320キロの差は約3分に過ぎない。運輸大臣は「乗客は3分の短縮より、定時運行と十分な座席を望む」と述べ、速度至上主義を批判した。

コウモリ保護に215億円の小屋

HS2では環境対策費も膨らみ、コウモリ保護のための小屋に215億円を費やした。こうした過剰な保護工事がコスト増に拍車をかけている。日本と違い、制度設計の過剰さが問題視されている。

リニアより遅く、リニアより高い

日本のリニア中央新幹線(東京―名古屋間286キロ、約9兆円)と比較すると、HS2は距離が短く(225キロ)、速度も遅い(最高320キロ)にもかかわらず、事業費は2.5倍超。その割に、リニアほどの時間短縮効果は見込めない。

政権は全面中止の可能性さえ探った

コスト膨張を受け、英国政府はHS2の全面中止も検討したが、既に巨額の投資が行われていることから断念。計画縮小でなんとか継続する道を選んだが、国民の不信感は強い。

巻き込まれた沿線住民の悲哀

HS2の建設工事で、沿線の村は壊され、住民は強制立ち退きに遭った。放置された家屋は大麻農場に転用されるなどの問題も発生。地域社会への影響は深刻だ。

日立の車両工場が陥った存続危機

日立製作所はHS2向けに車両工場を建設したが、計画縮小により受注が減少。工場の存続が危ぶまれ、英政府が尻拭いを迫られている。

新たな経営陣で信頼回復なるか

HS2は新たな経営陣を迎え、信頼回復を図る。しかし、巨額のコスト超過と計画縮小の傷跡は深く、前途は多難だ。

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新幹線にあこがれた英国の終着点

日本の新幹線に憧れ、世界最速を目指したHS2。しかし、過剰な速度追求と制度設計の失敗が、計画を破綻寸前に追い込んだ。運輸大臣は「3つの失敗」に集約されると指摘する。それは、誇大な目標設定、コスト管理の甘さ、そして政治的決断の遅れだ。英国の高速鉄道計画は、教訓として語り継がれるだろう。