中東情勢の緊迫によるエネルギー高騰で、2026年6月使用分から電気代の値上げが始まった。気象庁が「今夏は全国的に気温が高い」と予報する中、家計への影響が懸念される。しかし、エアコンの型式や使用法など設備に目を向けるのは一時しのぎに過ぎない。真の問題は「壁の中」にあると、住まいるサポート社長で日本エネルギーパス協会広報室長の高橋彰氏は指摘する。
断熱材の配置が快適性を決める
エアコンをつけているのに夏は熱気がこもり、冬は芯から冷えるように寒い家がある。電気代は跳ね上がり、天井近くには黒カビが生えることも。これはエアコンの古さや気温、日当たり、築年数とは関係がない。
「問題は素材や断熱材の厚さではなく、断熱材をどこにどのように配置しているか。その設計思想の違いが住まいの快適性や耐久性を決めている」と、米国の建築事情に詳しい建築家の岡田早代氏(米ウェントワース工科大学大学院客員教授)は語る。
日本のマンションで一般的なのは「内断熱」だ。コンクリート躯体の内側に断熱材を貼り付け、その上から石膏ボードを施工する。内断熱ではコンクリート躯体は外気にさらされ、冬は外気温で冷やされ、夏は日射と高温外気で加熱される。巨大な蓄熱体であるコンクリートが外部環境の影響を直接受ける構造だ。
ヒートブリッジがもたらす影響
外気にさらされた躯体の温度は、断熱層が途切れる床スラブや梁、壁を通じて室内に影響を与える。この現象を「ヒートブリッジ(熱橋)」という。コンクリートは木材などに比べて熱伝導率が高く、熱橋が起こりやすい。特に内断熱ではコンクリートが外から内へ連続してつながっており、断熱材を室内側に貼ってもその「橋」を遮断できない。コンクリートという熱の良導体が外気の冷たさをそのまま室内へ運ぶため、局所的に室内の表面温度が低下する。
岡田氏は「内断熱では、結露が発生しやすく、カビや建材の劣化を招く。建物の寿命を縮める原因にもなる」と指摘する。一方、外断熱はコンクリート躯体の外側に断熱材を施工するため、躯体が外気にさらされず、ヒートブリッジが生じにくい。しかし日本では外断熱が標準化されていない。
なぜ外断熱が標準にならないのか
高橋氏は「消費者が断熱性能を重視せず、建設コストを優先するため、内断熱が主流のままになっている」と分析する。また、建築業界では「マンションはコンクリート造だから大丈夫」という誤解が根強い。しかし、コンクリート自体は断熱性が低く、適切な断熱設計が不可欠だ。
電気代高騰が続く中、長期的な視点で住宅の断熱性能を見直すことが、快適な住まいと家計の負担軽減につながる。岡田氏は「日本でも外断熱を標準化し、断熱材の配置設計を改善することで、エネルギー消費を大幅に削減できる」と提言している。



