東京都中野区にある西武新宿線の沼袋駅は、西武新宿駅からわずか10分という好立地ながら、家賃が5万円台という驚きの安さを誇る。タワーマンションも大型スーパーもないこの街には、しかし独自の魅力が詰まっている。地元の人々はこの街を「とかいなか」と呼び、都会と田舎の両方の良さを併せ持つと語る。
安い家賃が生む食の豊かさ
沼袋で焼肉店「太陽」を営む伊藤陽史さんは、家賃の安さが食材への投資を可能にしていると話す。同店の肉は吉祥寺の有名店「肉山」と同じルートで仕入れており、分厚いハラミや脂の乗ったホルモンは口の中で溶けるようだと評判だ。店内には有名漫画家や海外の人気VTuberのサインが飾られ、SNSで話題になったことで、来日した外国人が成田空港から直行で訪れることもあるという。
「とかいなか」沼袋のコミュニティ
1951年から営業する老舗「伊藤精米店」の3代目店主、伊藤武夫さんは、沼袋の魅力を「都会でもあり田舎でもあること」と語る。先日も海外赴任から帰ってきた元住民が来店し、偶然にも店のスタッフの同級生であることが判明した。伊藤さんは「渋谷や新宿のど真ん中ではこういうことはあまりない。長く住む人が地域の商店で働き、旧友に出会う。沼袋という田舎っぽい街だからこそ起こる」と話す。
再開発の影響と今後の展望
沼袋駅周辺では地下化工事が進行中で、再開発の波が押し寄せている。伊藤精米店の伊藤さんは「再開発にはいい面も当然ある」と認めつつも、街の個性が失われることを懸念する。しかし、安い家賃と地域コミュニティの強さは、再開発後も沼袋の魅力として残り続けるかもしれない。



