東洋経済は2024年7月、新連載「気候変動と日本経済」をスタートさせた。第1回では、脱炭素化が日本の産業構造に及ぼす影響を多角的に分析している。連載は全6回を予定しており、気候変動対策が日本経済に与える長期的なインパクトを探る。
脱炭素化で変わる産業の地図
記事は、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、日本の基幹産業である自動車、鉄鋼、化学などが大きな転換点にあると指摘。特に自動車産業では、EVシフトにより部品点数が従来のエンジン車の約3分の1に減少し、サプライチェーン全体の再編が避けられないと分析している。鉄鋼業界では、水素還元製鉄への移行が課題で、現在の高炉法に代わる技術開発が急務とされる。
経済産業省の試算によれば、国内の温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比で46%削減するためには、年間で約20兆円の追加投資が必要となる。この巨額の投資が、産業構造の転換を加速させる要因となる。
雇用と地域経済への影響
産業構造の変化は雇用にも波及する。自動車産業では、エンジンやトランスミッション関連の部品製造に従事する約50万人の雇用に影響が出る可能性があると業界団体は試算する。一方で、EV用バッテリーやモーター、充電インフラなどの新たな分野で雇用が創出される見通しだ。地域経済においては、自動車産業に依存する愛知県や静岡県などへの影響が大きく、自治体による産業転換支援が急がれる。
記事では、ドイツのフォルクスワーゲンが2035年までに欧州でエンジン車の販売を終了する方針を示すなど、国際的な動きも紹介。日本の自動車メーカーも電動化戦略を加速させているが、中国や欧米勢に比べて出遅れているとの指摘もある。
エネルギー政策と国際競争力
脱炭素化の成否はエネルギー政策にもかかっている。日本は再生可能エネルギーの導入拡大を進める一方、原子力発電の再稼働も課題。記事は、安定供給とコスト競争力を両立するエネルギー構成の構築が急務だと強調する。国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、世界のクリーンエネルギー投資は2023年に1.7兆ドルに達し、日本はこの流れに乗り遅れないよう投資拡大が必要。
また、炭素国境調整メカニズム(CBAM)など、欧州を中心に導入が進むカーボンプライシングの動きも日本企業の競争力に影響を与える。記事では、日本の排出量取引制度の本格稼働が遅れている点を課題として挙げている。
イノベーションと新たなビジネスチャンス
一方で、脱炭素化は新たなビジネスチャンスも生み出す。水素サプライチェーンやCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術、次世代太陽電池などの分野で、日本の技術力が活かせる可能性がある。スタートアップ企業への投資も増加しており、クリーンテック分野の資金調達額は2023年に過去最高を記録した。
記事は、こうした変化に対応するためには、官民連携による研究開発の加速や、規制改革による新技術の社会実装促進が必要と結論づけている。



