東京大学大学院農学生命科学研究科教授の喜田聡氏は、著書『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)の中で、記憶を司る脳内の海馬はエネルギー不足の影響を受けやすく、特にビタミンB1の欠乏が障害を導きやすいと解説しています。
必須脂肪酸と脳の健康
人間は食事を通じて33種類の栄養素を摂取しており、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルに大別されます。脂質には飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、コレステロールなどがあり、不飽和脂肪酸には体内で合成できない必須脂肪酸が存在します。
不飽和脂肪酸のうち、炭素間の二重結合を1つ持つものを一価不飽和脂肪酸、複数持つものを多価不飽和脂肪酸と呼びます。ヒトはメチル基の炭素を1番目として数え、9番目以降の炭素に二重結合を導入できますが、それより手前には導入できません。
魚食とn-3系不飽和脂肪酸の重要性
6番目の炭素に二重結合を持つ脂肪酸をn-6系多価不飽和脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸)、3番目の炭素に二重結合を持つ脂肪酸をn-3系多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)と呼びます。これらは食事から摂取しなければならない必須脂肪酸です。体内で一部合成できますが、必要量を賄えないため、アラキドン酸、EPA、DHAは必須脂肪酸となっています。
疫学調査では、魚の消費量が低い国ほど、うつ病の有病率が高いことや、母親の妊娠時の魚食習慣が少ないと、IQの低い子どもの割合が高くなることが指摘されています。魚食に含まれるEPAやDHAなどのn-3系不飽和脂肪酸が要因とみられますが、脳への作用メカニズムはまだ明らかになっていません。それでも、魚を食べてn-3系不飽和脂肪酸を摂取するメリットは大きいと喜田氏は述べています。



