梅本佑利「歌を忘れて泣いた」児童合唱の切ない追憶
梅本佑利「歌を忘れて泣いた」児童合唱の切ない追憶

若手作曲家の梅本佑利が、横浜みなとみらいホールの委嘱で児童合唱のための新作を書き上げた。かつて児童合唱団で歌っていた作者は、声変わりによる喪失感をテーマにしたという。演奏は、自ら所属したNHK東京児童合唱団のユースシンガーズ、ユースメンズクワイア(指揮・大谷研二)ほかが務めた。

追憶を集約した二つの作品

作者の過去への追憶は、「歌を忘れて泣いた」と「I can't sing」に集約されていた。シンプルな和声が移ろう1~2分の作品は、純正律による聖歌のようなおもむきがあり、ノンビブラートで透明感のある児童合唱の響きは、短い歌詞をリフレインしながら消えていく。

選曲と演奏の収穫

この日の収穫は、梅本が選んだ米国のエリック・ウィテカーの「A Boy and a Girl」と、英国のベン・ノブトウの2作品だった。断片化されたヘンデルの戴冠式アンセムの一節が変形・生成を繰り返すノブトウの「FACE ANTHEM」は、チェロ(原宗史)とエレクトロニクス(今井慎太郎)も加わり、宗教的な荘厳さを醸し出していた。

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現代社会への視点と感傷性

声を素材とした音響をデジタル・テクノロジーとポップな感覚で変調させた作品は、音が固有性を失った現代社会へのシニカルな視点があってこそ力を持つ。一方、作者のいちずな思いがあふれた梅本の音楽は、その感傷性ゆえに、やや切れ味を欠いていたように思われた。

合唱曲のあいまに無伴奏チェロが奏した「dumb trick(くだらないいたずら)」と題されたごく短い作品群は、挫折と向き合う作業で消耗した作者の照れ隠しだったかもしれない。(松本良一)

――7月17日、横浜みなとみらいホール。

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