7月28日から8月2日までの6夜、テレビ東京は『BSテレ東 夏の歌謡ナイト!』を放送。演歌専門の『BS演歌の花道』をはじめ、歌謡曲の魅力を伝える番組が並ぶ。その中核を担うプロデューサーが、番組作りの哲学を語った。
『演歌の花道』は1978年にスタート。他局が歌謡曲やJ-POPへ軸足を移す中、あえて演歌に特化し、22年間で1107回放送。2003年に特番として復活し、2020年からBSでレギュラー番組となり、現在も熱い支持を得ている。
“しみる”ために妥協しない演出
最大の特徴は、歌の世界観を表現した凝ったセットとナレーション。毎回セット作りに丸1日を要する。歌手はマイクを持たず、演技を交えながら歌唱。口パクと誤解されることもあるが、小さいスピーカーから流れる音楽に合わせて生歌を披露しているという。プロデューサーは「演者にとってすごいプレッシャーだと思います」と苦笑する。
実際、田中あいみは初出演時「足がガクガク震えているのがテレビでどう映るか心配です」とコメント。伍代夏子は公式ホームページで「手持無沙汰で演技力の必要な番組」「私にとっては修行の場」と発言。水森かおりは自身のSNSで「職人て感じでピリッとする雰囲気」「演歌の花道でないと味わえない感覚」と語っている。
一方、セットは歌手陣から高評価を受けており、リハーサルから本番まで控室ではなくセットにいたという人や、主人公になり切って歌えたと喜ぶ大御所もいる。若手演歌歌手の中には、セットに感激し「写真を撮ってもいいですか?」「SNSにあげてもいいですか?」と聞く者もいる。
“説明しない”から伝わる哲学
歌の前にMCによる曲紹介は一切なく、主人公の心情や情景を表現したナレーションのみ。タイパ重視で「ながら見」や「わかりやすさ」が求められる時代に、真逆の演出を続ける理由は没入感へのこだわりだ。プロデューサーは「しみる状態とは、傷口が水などの刺激を受けて痛みを感じることを指しますが、傷がないとしみませんよね。それと同じで、心にしみる歌というのは、心に傷のある人がしみるのだと思います」と説明する。
さらに、エスカレーターの例えを挙げ、「1台しかないなら下り専用にするべきだ」と語る。高齢者にとって階段を降りるのが最も怖いように、人生も下り坂で不安を抱える人に寄り添う歌が心に刺さると説く。
歌番組が担う役割
「他局がやっていないことをやる」というテレ東のDNAを継承し、『演歌の花道』は独自の演出スタイルを貫く。プロデューサーは「スターとヒット曲を作る。この2点は歌番組の鉄板」と語り、若手演歌歌手への期待を込める。「若手の演歌歌手が続々デビューし、賢くて勘がいい子が多い。ただ、出演できる音楽番組が少なく、場数が足りていない。経験して、失敗して、成長していく機会を提供し、番組を通じてスターを育てることも目標の一つ」と述べている。
以下が『BSテレ東 夏の歌謡ナイト!』のラインナップ。
- 7月28日~30日 夜7時 『日本歌手協会 夏まつり唄まつり 2026』
- 7月31日 午後5時56分 『武田鉄矢の昭和は輝いていた“魅惑のムード歌謡” 徹底解剖3時間スペシャル』
- 7月31日 夜9時 『BS演歌の花道』
- 8月1日 夜9時 『ナイツの名曲ショー劇場』
- 8月2日 夜7時 『あの年この歌〜時代が刻んだ名曲たち〜』
(取材・文:河上いつ子)



