ベネチア国際映画祭で3冠を達成した映画『LOST LAND/ロストランド』が、"世界で最も迫害されている民族"と呼ばれるロヒンギャ難民の過酷な現実を描き出している。作品は、若者の強制徴兵や「人間の盾」としての利用疑惑にも踏み込み、国際社会に衝撃を与えた。
ヨーロッパと日本の観客の反応の違い
監督の藤元氏は、ベネチア国際映画祭での観客の反応について次のように語る。「ヨーロッパの観客は、ロヒンギャについて詳しくなくても、身近にいる難民の姿と重ね合わせて共感してくれました。難民が身近にいるという土台があるからこその共感です。」一方、日本の観客については「劇中の世界を遠い存在と捉える人も多かったが、映画をきっかけにロヒンギャ難民に興味を持ち、調べ始めたという感想もいただいています。距離が近づいていると感じます。」と述べている。
難民キャンプの実態:115万人が竹と防水シートの仮設住宅で生活
藤元監督は難民キャンプを初めて訪れ、その衝撃を語る。「多くの人々が行き場がありません。ロヒンギャの人々はミャンマー政府に不法移民扱いされ、市民権もなく、教育も受けられません。難民キャンプ内には初等教育がある程度で、UNHCRが高等教育施設を作りましたが、通えるのは数十人だけです。」
バングラデシュ政府はロヒンギャの定住を防ぐため、国連に対してもレンガやコンクリートを使った恒久的な建物の建設を禁じており、難民は竹と防水シートのみで作られた仮設シェルターでの生活を強いられている。防火対策が不十分な住居が密集しているため、調理中の火の不始末などで大規模火災が頻発し、一度に数千人が住居を失うケースも発生している。
食料支援の大幅削減:月額12ドルから6ドルへ
キャンプ内には115万人もの難民が生活しており、食料品や医療、相談所などはあるものの、支援体制は十分とは言えない。特に食料不足は深刻で、トランプ政権による国連への支援金削減の余波で、難民キャンプの食料支援額は一時、月額12ドルから6ドルに半減した。その結果、鶏肉や魚、野菜、果物、牛乳などは姿を消し、米、レンズ豆、塩など最低限のものだけが支給されている。栄養不足により急性栄養失調に陥る子どもが増加し、発育阻害も懸念されている。
藤元監督の過去作と本作の位置づけ
藤元監督はこれまで、日本に住む難民申請中のミャンマー人家族を描いた『僕の帰る場所』(2018年)や、ベトナム人技能実習生を描いた『海辺の彼女たち』(2020年)を手掛けてきた。本作はそれらに続く3作目であり、製作費の調達も過去作の実績があってこそ可能だったという。



