ザックと砂糖煮の娘の対話
ザックが吹きだした。「あなたはまだ子供でいいよ。だから、存分に迷ったり間違えたりしていい」すると、砂糖煮の娘は「いいえ、パパたちがどんな人生を選んでも口出ししないわ」と応じ、ベッドから飛び降りた。彼女はベッドの下からブリキの缶を引っ張りだし、ザックの隣に座った。缶を開けて靴墨や布を取り出し、仕事用の革靴の手入れを始める。靴用のブラシを持った手をふと止め、「でも」と呟く。
遺失物の部屋の秘密
「銀のパパがいなくなったら遺失物たちはどうなるのかしら」と砂糖煮の娘が言うと、ザックが「遺失物?」と顔を上げた。彼女は「お客さんの落とし物よ。再訪を願ってわざと大切な小物を置いていく人もいるみたい。銀のパパはそれを保管して、お客さんが再びやってきた時に返すの。数ヶ月後でも、十年後でも。ひとつ残らず記憶しているのよ」と説明する。ザックが「返されたお客さんは覚えているの?」と尋ねると、砂糖煮の娘は「人によるけど」と首を傾げた。「再訪までに長い時間が経った人はね、なんともいえない顔をするの。泣きそうな、幸福そうな。一瞬、顔が変わる。きっと、前にホテルにやってきた年齢に戻ってしまうのね。あたし、あの顔を見るのが好き。遺失物の部屋はすごいのよ。ザックはきっと気に入ると思うわ、博物館みたいなんだから。あの部屋だけ時間が止まっているの」と弾んだ声で語りながら、手際よく革靴を磨きあげていく。ザックの手だけが止まっていた。
金ボタンの人気
戦争が終わり、街が復興していくにつれ、金ボタンは街のあちこちのホテルや老舗カフェハウスから勧誘を受けるようになった。その中には、若い頃の美丈夫がいた街一番のホテルもあった。もともと十代の頃からホテル同士の連携や情報共有を謳っていた金ボタンは同業者の知人も多かった上に、裕福な客からの覚えもめでたかった。見事な金髪も、洒落た仕草も、機知に富んだ会話も、若い時分からよく目立っていた。引き抜きたいと狙うホテルの支配人も、自らの定宿に専属客室係として置いておきたいと望む客も多かった。
今後の展開
金ボタンは新たなキャリアの岐路に立っている。遺失物の部屋の存在や、砂糖煮の娘との対話が、今後の物語にどのような影響を与えるのか注目される。読者は、金ボタンの選択と、遺失物たちの運命に期待を寄せている。



