牛込御門内にある金沢米倉家の江戸屋敷に、倫太郎は日暮れ前にようやく到着した。牛込御門をくぐり、神田川を見下ろす土手沿いの道を歩くと、目的の屋敷が現れた。
「ここで今日から暮らすのか」と、玉砂利を踏みしめた倫太郎は感慨深く周囲を見渡した。六浦の陣屋は三方を山に囲まれていたが、江戸は平地であり、視界が開けていることに奇妙な感覚を覚えた。
雄馬の問いかけと倫太郎の戸惑い
雄馬が倫太郎に「坂上殿、私は急ぎ友田の家に戻り、すぐに御用部屋へ向かわねばならない。坂上殿は笹本様から何か聞かされているか?屋敷内のどこへ行くべきか、誰を頼るべきか」と尋ねた。
倫太郎は「あ、いやそれが」と答え、藤左衛門と共に来ると思っていたため、何も知らず、何も聞かされていなかった。万事を叔父に任せればよいと考えていた。雄馬は倫太郎の戸惑いようを見て悟ったようだ。「さすがは笹本様だ。おそらく私に世話をしろということでしょう。やれやれだ」と諦めた口調で言うと、時蔵が少し笑った。
時蔵の助言と新たな始まり
時蔵は「雄馬様、旅は道連れと申しますゆえ、坂上様を案内いたしましょう。さあ、もう皆様ご退勤なさいますので、早う、早う」と促した。雄馬は「わかったよ、家には戻らない」と言い、倫太郎を急かした。
こうして倫太郎は、江戸での新たな生活の第一歩を踏み出した。金沢米倉家の屋敷は、これからの彼の拠点となる。六浦とは異なる江戸の風情に、彼はどのように適応していくのだろうか。



