「何か用?」
相変わらず甘糟はびくびくしている。これでよくマル暴が務まると、日村はいつも思う。
「事務所までお運び願えないかと、代表が申しております」
「な、何で俺が事務所に行かなきゃならないのさ」
「このところ、何度かいらっしゃってるじゃないですか。今さら、何をおっしゃるんです」
「聞き込みに行くのと、呼び出されて行くのは違うよ」
「代表はたぶん、耳寄りの情報を持っているのだと思います」
「耳寄りの情報って何さ」
「それは、代表が直接お話しします」
「そんなこと言われて、のこのことヤクザの事務所に行くやつはいないよ」
「何言ってるんですか。仕事でしょう?」
しばし沈黙があった。まさか、自分がマル暴刑事だってことを忘れていたわけじゃないだろうな……。やがて、甘糟の声が聞こえてきた。
「しょうがないなあ。これから行くから……」
「お待ちしております」
電話が切れた。
甘糟刑事の葛藤
甘糟は普段から組員との接触に緊張しており、今回の呼び出しも同様だ。日村はその様子を冷ややかに見つめている。
組長の意図
組長は何らかの情報を提供しようとしている可能性があるが、甘糟は警戒を緩めない。



