JR女川駅前の商店街に、見慣れないホヤ料理の看板が目を引く。ホヤのピザやパスタという文字に誘われて、店内へ足を踏み入れた。
シンプルな味つけが素材を生かす
カウンターでホヤパスタ(税込み1100円)とホヤピザ(Sサイズ、同1200円)を注文。目の前に並んだ二つの皿には、大好きなホヤがごろごろと盛られている。
まずはパスタを一口。オリーブオイル、にがり塩、酒、にんにくのシンプルな味つけだ。ホヤのほんのりした甘さと苦みが引き立ち、口の中が一気に幸せになる。
だが、少しくせのあるホヤはたくさん食べられるものではない。店長の山田隆大さん(35)は「さわやかなミョウガが口の中をリセットしてくれる。飽きずに食べられると思いますよ」と話す。パスタにのった刻んだミョウガを合わせてみると、シャキシャキ感が柔らかくぷりっとしたホヤに合い、フォークを口に運ぶ手が止まらなくなる。
ピザとの相性も抜群
次はピザに手を伸ばす。チーズとは合うのだろうか。そんな不安は一気に吹き飛んだ。鼻を抜けるホヤの香りは際立つのに、口当たりはマイルドで、独特の苦さはない。生地に薄く広げたのりのつくだ煮と上に散らした岩のりがアクセントで、味が締まる。革命的だ。
食べても食べてもホヤ、ホヤ、ホヤ。石巻産のホヤをパスタは2個、ピザは3~4個使っているという。山田さんは「火を通すと意外と主張しなくて洋食にも合うんです」と素材としての可能性を語る。
震災を経て故郷で開いた店
山田さんは女川で生まれ育ち、高校は石巻、その後、仙台の調理製菓の専門学校に進んだ。東日本大震災が起きた2011年に卒業し、仙台の和食店や居酒屋で働いた。
2年たった頃、母から「女川に帰ってくる料理人が調理補助を探している」と聞き、女川に戻った。話は流れたが、13年に仮設住宅の一角のコンテナキッチンで、パスタやオムライスの販売を始めた。当時、知り合いから「女川のホヤを使って何か作ってよ」と言われてできたのが、看板メニューのパスタだ。15年に完成した町中心部の商店街に店舗を持ち、仙台や気仙沼から来るファンもいるという。
山田さんは「地域の名物の新しい使い方を探したい」と様々なメニュー開発に挑戦する。店名には「地域と客を結びたい」という思いを込めた。その通りに材料はウニ、カキ、銀ザケなど女川や石巻の名物ばかりだ。狩猟免許も取得し、自分で捕ったシカ肉のハンバーグやピザも出すようになった。「飽きるのが早いから、いろいろ試しています」と笑う。
パスタとピザを平らげると、自然と口角が上がっていた。ホヤの世界が広がった満足感もある。もう少しこの幸せに浸っていたい。



