渋谷の老舗「名曲喫茶ライオン」店長代理が守る100年の伝統
渋谷の老舗「名曲喫茶ライオン」店長代理が守る100年の伝統

昭和元年創業の「名曲喫茶ライオン」(東京都渋谷区道玄坂)が、国内外から若者や観光客が訪れる渋谷の街で、クラシック音楽の愛好家たちに親しまれ続けている。店長代理の山寺直弥さん(64)は、創業時から変わらない味と特別な空間を守り続けている。

特注スピーカーが奏でる美しい音色

JR渋谷駅から徒歩約10分、繁華街の一角に趣のある洋館がたたずむ。店内に入ると、都会の喧騒を忘れさせる静謐な空間に、コーヒーの香ばしい香りが広がる。歴史を感じさせる大型スピーカーから流れるクラシック音楽に耳を澄ませると、コンサートホールにいるかのような錯覚を覚える。

店内の1階と2階にある約120席のほとんどは、スピーカー向きに座れるように設置されている。山寺さんは「2階の最前列が特等席」と話す。

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1万枚を超えるレコードとCDのコレクション

開業当初はありふれた純喫茶だったが、常連客からのアドバイスもあって、洋館風の建物の魅力を最大限に引き出せるスタイルに至った。昭和20年の東京大空襲で建物が焼失するなどの危機もあったが、「音楽とコーヒーを楽しめる憩いの場所を提供したい」という情熱は消えることはなかった。

現在、店で収集したレコードやCDは計1万枚を超える。中には米軍関係者が持ち込んだ国内未発売の貴重な品もあるという。客は好きな楽曲をリクエストでき、曲名だけでなく収録時期や指揮者、演奏したオーケストラといった詳細なリクエストを受けることも珍しくない。

変わらない価値を提供し続ける

店では午後3時と午後7時の1日2回、「定時コンサート」を開催し、えりすぐった名曲が流れる。半世紀近く前に学生として通っていた客が、定年後に再び訪れ、「当時と変わらないですね」と驚くこともあった。

時間の経過とともに音響設備のメンテナンスのハードルも上がり、現在は山寺さんが自ら調整する。深煎りの「ホットコーヒー」は750円(消費税込み)で、1日中滞在できる。

高齢になった3代目の母に代わり、店長代理として歴史を紡ぎ続ける山寺さんは「自分の目が黒いうちは、なんとかこのまま続けていきたいですね」と語る。

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