近年、夏場になると冷やしメニューに力を入れるラーメン店が増えている。写真は筆者撮影。
酷暑対策が必須に
行列スペースに大型の日傘を設置する。テントを張る。タープを用意する。できるだけビルの日陰に列を誘導する。待合室を設ける。冷房の効いた室内で待機してもらう。呼び出しシステムを活用する。車で待機できるようにする――こうした工夫をする店が明らかに増えている。それだけ暑さが深刻になったということだろう。以前なら「あったらうれしいサービス」だったものが、今では必要不可欠な設備になりつつある。
ラーメンそのものの味とは直接関係ない。しかしこうした細やかな気遣いが店の評価を高め、ファンを増やしていく。酷暑時代のサービスとは何かを考えさせられるエピソードだ。
「いかに並ばせないか」が問われる時代
ここまで人気ラーメン店の行列対策について綴ってきたが、触れておかないといけないのは、そもそも、ラーメン店にとって「行列」は特別な意味を持つということだ。
特に個人店は大手チェーンのように莫大な広告費を投じられない。だからこそ店頭の行列が広告の役割を果たしてきた。「あんなに並んでいるなら美味しいに違いない」――そう思わせる効果は絶大だし、実際、テレビ番組でも行列店は取り上げられやすい。SNSに投稿された写真も拡散されやすい。行列そのものがブランド価値を生み出してきた。だから本来なら、店側は行列をなくしたくない。
しかし近年の酷暑が、その常識を変えつつある。炎天下で30分、1時間待つことは、もはや単なる我慢大会では済まない。熱中症のリスクが現実的な問題として存在する。実際、多くの店主は「お客さんが倒れないか」という不安を抱えている。
行列が繁盛店の証だった時代を経て、今では「どう並ばせないか」まで含めて店づくりが問われる時代になったのである。
これから評価されるのは、長い行列を作る店だけではない。安全に、快適に、美味しい一杯へたどり着ける店。そんな店づくりが新たな競争力になっていくのではないだろうか。



