大分県内で唯一のウイスキー専業の蒸留所「久住蒸溜所」(竹田市久住町)が、大麦麦芽のみを原料とする「シングルモルト」の発売を始めた昨年以降、その芳醇な味わいが県内外で好評を得ている。創業者の宇戸田祥自さん(56)に、ウイスキーにかける思いや今後の展望について聞いた。
ウイスキーとの出会い
宇戸田さんは、学生時代に宮崎市のバーで飲んだスコッチのシングルモルトがきっかけでウイスキーにのめり込んだ。お酒はあまり強くなかったが、アルバイト代を握ってバーに通い、さまざまなウイスキーを味わうことが楽しみだったという。実家はごく普通の酒屋で、主に経営を担っていた母を手伝おうと29歳の時に帰郷。そこからウイスキーの取り扱いも少しずつ増やしていった。
酒販事業者がウイスキーを造ろうと考えたのは、販売やウイスキー文化の普及イベントを始めて、造り手との接点や蒸留所見学の機会が増えるうちに、地元の久住で造られたウイスキーを飲んでみたいと思うようになったからだ。「自分が決断しなければここに蒸留所ができることはないと思い、何の勝算もなかったが2015年にやると決めた」と振り返る。
蒸留所設立までの道のり
蒸留所設立にあたり、それまで仕入れ先としてお世話になっていた「イチローズモルト」を造る埼玉県のベンチャーウイスキーや鹿児島県の本坊酒造に相談。「本気でやるなら教えてあげるよ」と許可をいただき、何度も通うようになった。17年頃からは、1週間ほど朝から晩まで製造について教わる研修を繰り返した。
全国の知人を回ってお金を借り、スコットランドのメーカーに設備を発注。コロナ禍で技術者が来日できない事態が発生したが、県内の企業に蒸留器などを据え付けてもらった。21年1月に酒類製造の免許を交付され、25年の1本目のリリースまで、都合丸10年かかった。



