山形県村山市の閑静な住宅街に、緑の看板が目印の食堂「もちやかた」がある。店に近づくと蒸し米の香りが漂い、食欲をそそる。女将の坂井奈緒さん(49)が「いらっしゃいませ!」と威勢の良い声で迎えてくれる。
映画制作から農業へ、もちとの出会い
奈緒さんは元々農業が嫌いで、「虫も外で働くのも嫌だ」と話していた。映画が好きで、都内の専門学校で映画制作を学び、約2年間アシスタントを務めた。しかし激務で体調を崩し、実家に戻った。
2002年頃、フィリピン、インド、タイを旅行した際、お金や物が多くなくても幸せそうな人々の姿に衝撃を受け、「家族で生きているのがその理由では。家族で出来る仕事がしたい」と考え、農業を始めた。現在はイギリス・ランカシャー出身の夫サムさん(44)と共に、コメやサクランボなどを育てながら、もちの美味しさを広めている。
きねつきもちの感動を提供
かつては自身ももち嫌いだった奈緒さん。約15年前、ある農家に「機械でついたもちがべたべたして嫌」と話すと、「きねでついたもちを食べたことがないからだ」と返された。実際にきねでついたもちを食べて感動し、小さな小屋で提供を始めた。評判を呼び、2019年に現在の店をオープンした。
店内では、実際に餅をつく様子や料理を作る姿を見ながら食事ができる。奈緒さんは「体を作るご飯の背景を感じて、社会の様々な物事の裏側に目を向けるきっかけにしてほしい」と願っている。
選べる9個のひとくちもちと雑煮セット
人気メニューは「選べる9個のひとくちもちと雑煮のセット」(税込み1580円)。ひとくちもちは22種類から選べ、この日はずんだやあんこきなこ、豚キムチ、今月のもち(ツナマヨ)など9種類が提供された。雑煮には奈緒さんや近くの農家が作った野菜などが使われ、小鉢二つが付く。
餅は柔らかく伸びてほっとする味わいで、甘いものとしょっぱいものの両方があり、飽きが来ない。奈緒さんは「食べ切れるかなって心配するお客さんも、ぺろっと食べちゃうのよ」と話し、苦しくない満腹感が人気の理由だ。もちは毎日約9キロを、サムさんと奈緒さんらがついている。奈緒さんのおすすめはずんだで、自家栽培の秘伝豆を使用し、鮮度の良さが売りだ。
奈緒さんは「忙しい日々の合間に、ここに来てよかったと思ってほしい。幸せになれるもちを作っていきたい」と笑顔で語った。
店舗情報:村山市楯岡鶴ヶ町1の2の31。もちはテイクアウト可能。営業時間は午前10時~午後4時(ラストオーダーは午後3時、もちがなくなり次第終了)。水・木曜定休。電話:080-7582-3661。



