鎌倉・小町通りにある和菓子屋「ともや」の二代目夫婦が考案した「幸せをよぶ大仏さま焼き」が、観光客が激減したコロナ禍にあっても1日1000個を売り上げる大ヒット商品となっている。ほほ笑む大仏の形をした焼き菓子で、6種類の開運フレーバーが特徴だ。
「大仏さま焼き」の誕生背景
「ともや」の二代目である南さんと妻の亜実さんは、従来の和菓子に加えて新しい看板商品を模索していた。ある日、亜実さんが大仏のイラストを描いたことがきっかけで、焼き菓子のアイデアが浮かんだ。立体モデルをもとに特注の焼き型を作り、2020年3月に「幸せをよぶ大仏さま焼き」として発売した。
フレーバーは「人気運」「金運」「健康運」「恋愛運」「仕事運」「総合運」の6種類。それぞれの運勢は、亜実さんが以前から信頼する辻堂の占い師に鑑定してもらったものだ。店頭では「カスタードを1個」の代わりに「人気運を1個」と注文する客もいるほど、開運をテーマにした商品設計が受けている。
コロナ禍で観光客が消えた鎌倉
発売直後、新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令され、鎌倉の小町通りから観光客が姿を消した。南さんは「桜の季節なのに、あんなに人の通らない小町通りは初めてでした」と当時を振り返る。閑散とした街並みは、まるで知らない場所のように感じられたという。
先行きの見えない不安な日々の中、南さん夫妻は「今できること」を模索。インスタグラムを開設して商品を紹介し、オンライン受注で全国配送を開始した。また、ママ友へのデリバリーも行い、ステイホーム期間中の人々に日々のささやかな楽しみを提供した。届けた先の友人たちが喜ぶ姿が、南さんにとって大きな励みになったという。
SNSで広がる口コミと若い世代の支持
インスタグラムでの情報発信が功を奏し、大仏さま焼きは瞬く間に口コミで広がった。特に若い世代の間で人気を集め、タグ付きの投稿も多く見られるようになった。ほほ笑む大仏の愛らしい見た目と、開運フレーバーを選ぶ楽しさが、SNS映えするコンテンツとして支持された。
持ち帰り用の紙袋には運勢とフレーバーの組み合わせが記されており、6個買うと箱詰めも可能。おみくじを楽しむような感覚で、何度でも選ぶ楽しさを提供している。店舗のある小町通りは鶴岡八幡宮への参拝客も多く、開運フレーバーは街を歩くモチベーションとしても親和性が高い。
1日1000個を売るヒット商品に
こうした取り組みの結果、大仏さま焼きは1日1000個を売り上げるまでに成長。観光客が戻りつつある現在も、その人気は衰えを知らない。南さん夫妻は「多くの人に喜んでもらえる商品を作り続けたい」と語る。大仏さま焼きは、鎌倉の新たな名物土産として定着しつつある。



